「あ・・・・・。」
久々に自分の部屋の棚を掃除していた私。
すると1つの古びた手帳が出てきた。
小さい頃にハマッていた日記。くっだらないこと書いてるなあ、なんて昔の自分に笑っていると、その手帳からハラハラと出てきたのは、1枚の写真だった。
見てみると弟のノブと一緒に撮った写真。2人で泥んこになりながらピースしてる。
あーやったな、泥遊び。毎回毎回ノブと泥だらけになって帰ってお母さんに叱られてたっけ、なんて思い出しながら小さかったころの自分との部を眺める。
すると私の部屋のドアがガチャリと開いた音がした。
「ねーちゃん、オレ明日英語当たるんだけ・・・・って何やってんだよ。部屋超汚ねー。俺より汚ねー。・・いや、互角か?」
「失礼ね。整理してるから汚くなっちゃったの。」
ノックもせずにやってきた無礼者は1つ下の弟の信長。お前の部屋の汚さと一緒にするなと心の中で思う、が、そんな事どうでもいい。信長が来たのはちょうど良かった。
「見てよこれ。」
私たちかーわいい、なんて言いながらさっき出てきた写真を見せるとノブは頭を掻きながら私から写真を受け取った。
「・・・俺ちっさ!」
「そりゃー、幼稚園くらいだし。」
「ねーちゃん今と身長変わらなくねぇ?」
「ふざけんな、50センチは伸びてるわ。」
一緒の身長だったはずの私たちは、まず最初に私がノブより少し身長が大きくなって、中学に入った瞬間にノブに抜かされてしまった。
ぐんぐんぐんぐん阿呆みたいに背が伸びたノブ。脳みそレベルは確実に私の方がお姉ちゃんだけど、身長と見かけだけは弟のはずなのにお兄ちゃんみたいだ。
「ねーちゃんは悲しいよ、ノブ。」
「え、なんで!?」
少しだけすねる様に言うと、ノブは「俺なんか言った?」って少しだけ焦る。
そんなノブが凄く可愛く見えたのは、大事な弟だからだろうか。焦る信を見て思わず口端を上げながら眉を下げてしまう。
「冗談だよ。じゃ、一緒に片付けよ!」
「え、俺もかよ・・・。」
こんな可愛い弟を、私はあとどれくらい独り占めできるだろう。
「いーじゃん!暇でしょ?」
「俺部活で疲れ・・・、」
「よし、あの上のダンボールを取れ。」
「・・・・・うっす。」
棚の上のダンボールを指せば、ノブは苦笑いしながら軽々と取ってくれた。
いつか離れてしまう弟かもしれないけど、せめてそれまでは、私の傍で一緒に笑っていて。
私の、もっとも大事な人。
昔の写真。蘇る記憶。
(ねーちゃん、後でちゃんと英語教えろよ。明日当たるんだからな。) (教えるっつーか私がやってあげる破目になるんでしょ。) (さすがねーちゃん、わかってる。) (まあね。)
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