(「太陽が一番長く空にいる時」番外)
「岸本、dog(ドッグ)がbog(ボッグ)になってんで。大丈夫か?」
「・・ボッグ?・・・・ほんまや、あかん。・・つかドッグってなんやねん。・・・ホットドッグか?」
「ドッグは犬や。高3でそれはヤバいで。」
「この暑さのせいや。」
岸本は思いっきり机に上半身をダイブさせた。
現在30℃超えのピーカン照り。岸本は英語の補習を受けていた。私は補習じゃなくて、岸本見てたいから居るだけ。
「つかお前スカート上げすぎや。パンツ見えんで。」
ちょっと頬を染めて、遠慮がちに言って来る岸本が可愛くて仕方ない。んふふ、と笑って岸本が使ってる机に両腕を突いて顔を近づけてやった。
「いややわー、岸本ったらどこ見てるんー?」
「見たくて見てるんちゃうわ。」
ぷいっと顔を背けて、私を自分の机と言う名のテリトリーから追い出す。
まぁ目の前でスカートギリギリまであげてる私がいけないんですけどね。
そんなことを思いながら下敷きをウチワ代わりにしてパタパタと扇いでいたら珍しく涼しい風が窓から入ってくる。
汗をかいた首筋にひんやりとして気持ちいい。
「つか南の奴、俺を置いて補習サボりおった。許せん。」
窓の外をぼーっと見ていると少しイライラしたように岸本はノートに単語を書きなぐった。魔術みたいにドッグドッグドッグと阿呆みたいに書き続けている。
もういいやろ、ドッグは。ええかげんにしぃや、この男。
「うちの親友もやねん。まあしゃーないな。南君と付き合っとるしな。」
「お前の親友が南にサボろうって誘ったんや!」
「わーお。やりおるなぁ。」
なんて口元を上げて言ってやったら余計に腹が立ったようで、力を入れたのか岸本のシャーペンの芯がボキッと折れた。
「なに?岸本もサボりたかったん?」
からかうのが面白くってニヤニヤしながら問いかけたら、岸本は少し絶望的な顔をして視線をノートに送った。
「・・・・俺は無理や。補習サボったら卒業できひんもん。」
あああああ、と頭を抱えて机に突っ伏する。
英語なんか消えろ、日本語だけで十分やないか!バスケやりたいっちゅーねん!と必死に現実逃避をしようとしている岸本。
哀れだなー、なんてまたニヤニヤしながら見ていたら、岸本は、あ!と頭を抱えながら顔を上げて私を見た。
「てかお前何でここ居るんや?英語の成績トップクラスやろ?」
「・・・・dogをbogって書く誰かさんの為にわざわざ来たってん。」
なーんて言ったら岸本はバツの悪そうな顔をした。
なんか岸本は可愛い。感情の上がり下がりが激しくて、コロコロと表情が変わる。見てて飽きない。
「・・嘘。ただ岸本見てたくなったから居るだけや。」
そういえば、岸本はさっきのバツの悪そうな表情から一転して、顔を真っ赤にした。
そんな君がめっちゃ好き
(ど、どあほ!真顔でそういう事言うなや!恥ずかしい!) (えー、だって実はうち岸本のことめっちゃ好きやねんもんー)
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