旧友に会ったのは、なまえが牧の付き合いでスポーツショップに来ていたときだった。
「あれぇ・・?ひさし・・・?」
「・・・・なまえじゃねぇか。」
見覚えのある顔の男がスポーツショップにいたのだ。
髪型が違っていたので一瞬戸惑いはしたが間違いない、三井寿だとなまえは確信して声をかけた。なまえの声に振り向いた三井は驚いた顔をしてなまえを見た。
「やっぱり寿だ!」
「久しぶりだな。」
何してんだよ、と見ていたバッシュを元の位置に置いて、三井が懐かしそうに笑ってなまえの傍まで来る。
何その髪型似合ってる、本当に更正したんだね、バスケ部だっけ?そんな会話に花を咲かせ、テンションを上げ続けるなまえの横で牧はそれを見守っていた。
「あ、紳一。これ、三井寿。喧嘩しまくってた時よく遊んでた友・・悪友。そんでもって寿、この人は牧紳一。彼氏。」
「か・・?!」
彼氏?!と三井は心底驚いた表情を見せる。その反応に「何よ文句あんの」となまえがにっこり笑んだ。
「お前牧がどういう奴知ってんのか?」
「神奈川No.1でしょ。」
知ってる知ってる、とひらひら手を振れば「あぁそうかよ」と三井は苦笑した。
「お前に彼氏が出来る事でさえ奇跡なのに相手牧って‥‥、お前一生分の運使ったな。」
「ちょっとアンタ人が黙ってればさっきから失礼ね。」
殴るわよ、おーやってみろバーカなんて言い合いになっているのを置いておいて牧は優雅にバッシュを見ていた。
「あんた私に勝った事ないの覚えてる?」
「俺は今バスケしてっから暴力は使わねぇんだよ、やんなら前にやってたトランプか腕相撲かコイントスだ。」
「えぇなにそれずるい私勝った事ない!」
卑怯!と噛み付くなまえに三井は「バカヤロウ喧嘩に卑怯もクソもねぇんだよ!」とデコピンを返した。その瞬間に「あ、」と三井は何か思い出したように声を出す。
「そういえばお前、鉄男とはどうした?」
お前が更正するって言いに来た時俺入院してその場にいなかったから気になってたんだよ、本人に聞くってのも微妙だったしな、と三井はデコピンをされたおでこを抑えて悶えているなまえを見る。
「あぁアンタ宮城にコテンパンにやられて入院してたんだっけ。」
「いらない解説ありがとうよ。」
「いやあ聞いてよ、あたしあいつに更正するからケジメつける為に一発殴れっつったのにあいつ殴んないの!」
「(鉄男なまえのこと好きだったもんなぁ・・)」
「アイツ殴らないでって言う奴殴んのに、なんで殴れっつってるやつ殴んないの?」
あいつ頭パーなの?意味わかんなかったんですけど!となまえは三井の襟元を掴んで激しく前後に揺さぶった。俺が知るかよ!と自分からなまえを引き剥がすとなまえのすぐ後ろにいた牧に声をかける。
「牧、お前よくコイツと付き合う気になったな。」
「・・・・そうだな。」
困ったように笑う牧になまえは「え?!」と振り向いた。
「ちょ、何その反応!」
「なまえも前に言ってただろう?お互い両極端にいたのにどうして付き合えたのか不思議だって。」
「・・・まぁ、確かに。」
俺もそう思ったからそういったんだよ、と牧はなだめるようによしよしとなまえの頭を撫でた。
むすぅーっとしていたなまえだったが、牧に頭を撫でられて少し機嫌は回復したようだ。そんな様子を傍で見ていて自然に笑みを零す。それを見たなまえは照れたのを隠しながら三井を見た。
「・・・なによ。」
「別に。お互い・・よかったな。」
何が、とは聞かなかった。
そんな意味は聞かなくたってわかっていたから。お互い周りの人たちに助けられてここまで戻ってこられたのだから。
ポンポン、となまえの頭を2度軽く叩く。照れ隠しになまえは三井に反撃してみる。
痛いよ何すんのよ、なんだよ軽くじゃねぇかよ昔お前にやられた蹴りの方が何百倍も痛かったわ!と店でじゃれ合う2人を牧はただただニコニコ見守っていた。
一通り久しぶりの再会を楽しんだ2人はとっても嬉しそうな顔をしていた。
「じゃあ俺もう見終わったし帰るわ。」
三井は持っていた鞄を持ち直してひらひらと手を振る。
「ねぇ、寿。」
「あ?」
「私、紳一と付き合ってから大分変われたよ。」
帰ろうとしていた三井が首から上だけ振り返ってなまえと視線を交わす。
なまえはすごく楽しそうで嬉しそうな、優しい表情を浮かべていた。
「紳一の前でも辛かったら泣けるようになった。」
どんなに喧嘩をして怪我をしても、辛くても人前で泣けなかったなまえを、三井は知っていたから。
三井はただ一言、色々な感情を込めて「よかったな」と笑って帰っていった。
「久々に友達と話せて楽しかったか?」
「うん、やっぱり人間変われるんだね。」
寿も変わったよ、と笑ってなまえは牧の腕に抱きついた。
さよなら、過去の自分
(なんかごめんねー!寿とばっか話して!バッシュ良いのあった?) (ん、見つけた)
**** 牧さん少なくてごめんなさい。友情出演にみっちゃんをどうしても出したかった。
|