「暑い・・・・、」
「暑い言うなや。余計暑くなるっちゅーねん。」
「・・・・めっちゃ暑い。」
「しばくぞ。」
真夏の午後2時。補習を食らった私と南は学校に行ったものの、暑くて暑くて我慢できずに飛び出した。つまり補習からの逃亡。
そのままクーラーの効いた家に帰ればよかったのに、何で私らは一番暑い時間に公園のベンチで座ってるんやろか。
太陽は私達をあざ笑うようにギンギンに照っている。
私は制服の半袖カッターシャツの袖を折りに折りまくってノースリーブに変化させた。スカートもパンツが見えない程度に短くした。
隣でウチワを弱弱しく仰いでいる南も長袖のシャツを折って七部袖に、ズボンの裾も折って七部丈に。てか最初から半袖着てくればええんちゃうか。
「今頃皆クソ真面目に補習やってんやろな。」
南が死にそうな顔してベンチに思いっきり体重を預けながらそう漏らした。
確か今の時間は英語の補習やから、たぶん岸本とか絶対死んでる。あいつめっちゃ頭悪いもんな。頭悪い上に大の苦手の英語で、しかもこの暑さやったら絶対机に突っ伏して死んどるわ。
「南は窓側やから良かったやん。風来るし。」
「阿呆。あれ無風の時死ぬで。太陽めっちゃ攻撃してきよる。」
「カーテン閉めればよかったんちゃうん?」
「カーテン学校がクリーニング出して無かったやん。気づかなかったん?」
「気づかんかった・・・・。ああもううちの頭暑さのせいで腐ってきてるー!どないしよー!」
「・・・元々やん。」
「何か言うた?」
「別に。」
首筋や額に流れる汗を手の甲で拭いながら南を睨めば、真正面を向いたまま南はそう言った。
ちょっと頭来たから瞬時に南の右手からウチワを奪い取る。
「あ、ちょ、返せや!」
「嫌や!もう暑くておかしなってん!」
「お前がおかしいのは元々やって言うてるやんか!」
「一緒に補習逃亡してやった勇気ある女の子に何てこと言うん?!」
「なまえが抜け出そうって言ったんやろ!」
暑さのせいで視界がちょっと歪んでいる錯覚に陥りながら、公園のど真ん中で阿呆みたいに叫ぶ私たち。
公園に舞い降りたハト達も私達を馬鹿にするように涼しげな顔して足元で地面をつつく。
人間様ナメとると終いには焼き鳥にして食ったるぞ。七味かけて食べたるからな。
「あー、でも焼き鳥よりアイス食べたいな。ゴリゴリくん。ソーダ味。」
「(焼き鳥・・・・?)俺はリッチミルクの気分や。」
「良いな、リッチミルク。うちも食べたい半分こせぇへん?てか買いに行かん?コンビニなら家より近いとこにあるで。」
暑さで声が枯れてきてる南がちょっと可哀想になってきたから、さっき奪ったウチワで風を送ってやる。
「半分こは了承したる。けど俺もう動けへんわ。」
「おいバスケ部頑張れや。エースちゃうの?」
「もう引退してん。元エースや。」
そう言って南は私からウチワを奪いとった。
「うわ、もう返してーな。」
「これ俺のや。」
「みーなーみーぃー。」
南の制服の裾を引っ張ってくっ付けば、暑苦しいと返された。しょうがないから離れようとしたら、逆に腕を引っ張られて南の胸に横からダイブ。
「暑かったんやないの?」
「うるさいわ。」
そう言った南の顔は暑さのせいか、それとも恥ずかしさのせいか、太陽みたいに赤かった。
太陽が一番長く空にいる時
(・・・よし、なまえ。コンビニ行ってアイス買ってうち行くぞ。もう我慢できひん。) (・・・何の我慢ができんの?) (暑さに決まっとるやろ、しばくぞホンマ。)
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