「ほ、補習が出来ない・・・・!?」

「そうなんだよ、ごめんなみょうじー。」

「軽っ・・・・!」




勉強がお世辞にもできるとは言えないわたくしみょうじなまえ、只今大ピンチです。




「何でですか!」

「俺も年だから放課後まで残って生徒に物事を教えるっつーのはしんどいんだわ。」

「そんな馬鹿な・・!アンタまだ若いだろ・・・・!」



せめてもっとマシな言い訳できないんですか!とヒステリック気味に訴えかければ、先生は悪い悪いと笑う。


そもそも勉強があまり好きではない私が個人的に土下座してお願いしたこの化学の個人補習。

一応大学進学を希望している私はあまりにも出来ない化学を強化しようと思ったのだ。


陽子ってなんだ、電子ってなんだ。原子番号?そんなもん何番でも原子は原子だろーが。・・・・あれ、原子って何だっけ?



・・・・まあこんな補習も先生に頼まずに予備校に行けば良い話なんだけど、お家の都合上予備校に行けないんです。

あ、別にお金が無いとかそういう問題でもないんだけどね。ただ単に両親は勉強を強いらないタイプなだけであって。


そんなこんなグダグダと考えていると、先生が笑顔で私の肩に手を置いた。




「でも、安心しろみょうじ。他の先生にお前の補習をやっていただくようにお願いしておいた。」

「・・・ぐす。・・・誰先生ですか?」



微妙に泣けてきて、潤んだ目を擦りながら問いかける。




「聞いて驚け。なんと藤真先生だ!」

「・・・・・・マジ?」



藤真藤真、藤真って藤真健司先生ですか。この翔陽卒でバスケット部の名プレイヤーだったと謳われ、それを買われて大学卒業後に翔陽が呼び戻したという藤真先生ですか。

今女子に人気の藤真先生ですか。


そして



「あなたと同僚かつ元チームメイトの藤真先生ですか、高野先生・・・・!」

「あ、良く知ってんな。ちなみに数学の花形も俺たちと一緒だぞ。」

「知ってますよ、このやろう。」




そう、忘れていた。

このふざけた高野先生も、冷静沈着と言われる長身の花形先生も翔陽に呼び戻されたって有名だった。

何でも花形先生はバスケも藤真先生に次ぐ位上手くて、頭が良いからこの学校の先生は花形先生をゲットした時凄く嬉しかったらしい。

高野先生はあれだ、なんだっけ。・・・・あ、藤真先生と花形先生のおまけ的な感じだっけ。




「オレもバスケ部の副顧問になるようにって呼び戻されたんだよ、はっ倒すぞみょうじ。」

「(うわやべ、声に出してた・・)じょ、冗談です・・・。ていうか話し戻しますけども、ほんとっ・・・・!本当勘弁してください!阿呆ですか!」

「おまっ・・!教師に向かって阿呆・・・・?評定2確定だな。」

「すいません嘘です。」



評定1、って言われずに評定2って言うところが何ともリアルで必死に謝った。

この時期評定2をとったらマズい。



いやいや、そんなんこの際どうでもいい。ただ藤真先生の特別補習はまずい。だって全校の女子にどんな目で見られ、どんなイジメがくるか・・・・・

か、考えただけで恐ろしい。



「どこが不満なんだよ、言ってみろ。藤真だぞ。他の女子なら泣いて喜ぶぞ。」

「だからその他の女子が怖いんですうぅぅー!藤真先生人気だから二人きりで補習なんてことになったら呼び出される・・・・!」

「おい、それはさりげなく『高野先生はモテないからダイジョーブ☆』的なことを言ってるのか。」

「そ・・・、ち、違います。」

「・・・・今一瞬そうですって言おうとしたろ。」



もういいよ泣くぞ、と高野先生は微妙にいじけ始める。

あーもうこうなるんだったら最初から親に頼み込んで予備校にでも行かせてもらっときゃ良かった。




「ともかく!藤真先生とやるなら私・・・・、」

「俺が何?」

「・・・・・!」



バッと後ろに振り返ると、そこには今噂していた藤真先生がいた。

高野先生と一緒で化学の先生らしく白衣を着て、片手には明日授業で使うと思われるプリントの束が持たれている。




「あ、あの・・・。」

「あ、ちょうど良かった。藤真、これみょうじ。補習よろしくな。」

「えぇ、ちょっと・・・・!」



私の肩を持って藤真先生の方へ、ぐるんと反転させる高野先生。

恐る恐る藤真先生に目を合わせるとにっこりと微笑まれた。




「あぁ、知ってる。みょうじさん。高野と同期で化学と生物担当の藤真です。補習頑張ろうな。」

「(話進んでるー!)え、いや、でも藤真先生はバスケ部の監督だから忙しいでしょう・・し・・・・!」



よし、よくやった私。ナイスだ私。先生を気遣っているような雰囲気をかもし出しながら補習を回避しようとするこの発言は自分的にナイスすぎる。自分万歳!




「そんなの気にすんなよ。顧問には花形がいるし、一応副顧問に高野もいるし。ちゃんと時間作って教えてやるから。」

「いや、でも・・・・・!」

「じゃあ、明日の放課後化学準備室で待ってるから。筆記用具だけあれば良いからな。じゃあまた明日。」

「え・・・・!」



手をひらひらと振りながら去っていく藤真先生を止められず、補習のお断りもする事が出来ず、残ったのは高野先生の「一応高野も副顧問だからってなんだよー」という不満そうな声だけだった。



明日からどうする、私・・・!

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