今日で宗ちゃんと付き合い始めて丁度1年になる。

別に付き合いたての頃から不安だったわけではないけど、なんだかんだ1年も一緒にいられて嬉しく思う。



だから宗ちゃんに感謝と好きの意味を込めて、送りたいと思います。




「ということでハイドーゾ!」

「という事で、って何。」

「まぁまぁ。」



神様が味方をしてくれたようで今日の男子バスケ部はミーティングで終わった。

だからまだ空は明るい。明るいと言っても周りは大分オレンジ色に包まれて入るけど、いつもの真っ暗闇の帰り道に比べたら明るすぎるくらいだ。


久々の早帰り、しかも1周年記念。

このまま帰るのは勿体無くて宗ちゃんにお願いして近くの公園のベンチに腰をかけた。


そして冒頭に至る。



「何これ?」

「開けてもいいよ!」

「じゃあ家で開ける。」

「・・・・・。」

「ウソウソ。今開けるから泣きそうな顔しないでよ。」



上品に口元に手をやって笑う宗ちゃんは正直女の私より綺麗だと思う。

・・・・悲しくなるからこれ以上何も言わないし、考えないけど。


そんなことを考えている私の横で宗ちゃんはガサガサと包みを開けて中味を手に取る。



「お守り、と・・・・。・・・・これは・・・・。」

「え、ちょ、わかんない?わかんないの?!」

「うーん、形が歪で・・・、」

「・・・・・!」

「冗談だって。クッキーでしょ?」



ほらほら泣かない、と宗ちゃんは私の頭を撫でた。


泣きます、泣かせてください。

正直いじめられる度に私よく宗ちゃんと1年続いたな、って自分を褒めるよ。なんて思っても、それ以上に宗ちゃんが日に日に愛おしく思えてしまうから続いたんだと思う。

いじめられても、からかわれても、その後に見せてくれる宗ちゃんの優しさが好きだと思ってしまう。



「うん、味は大丈夫。美味しい。」

「・・・・ってえぇ?もう食べたの?」

「うん、だって開けたら食べたくなるし。」


手に付いたクッキーの粉をペロッと舐めながら宗ちゃんは笑った。


袋に入った私の手作りのクッキーを一枚とっては眺めて口に運び、眺めては口に運び。

必ず一枚一枚口に運ぶ前にクッキーを見る宗ちゃん。




「・・・・あの、焦げてたのはチョイスしてないし、毒も入れてないですよ。」

「え?・・あぁ、違う違う。そうじゃなくて。」


さもおかしそうに宗ちゃんはまた声を殺して笑った。



「そういえばなまえから手作りのお菓子を貰うのは初めてだな、って思って。」


だから嬉しくて一枚一枚見ながら大事に食べてるんだよ、と宗ちゃんは優しく笑んだ。


一気に心音が大きくなる。顔も熱くなる。

確かにバレンタインはチョコを作る時間が無くて市販のもので済ませてしまっていたし、誕生日もお菓子とかじゃなかったから、宗ちゃんの言う通りこれが初めて宗ちゃんに送った手作りのお菓子。


でもただそれだけの理由で一枚一枚眺めてから食べるなんて。もう今の気持ちをなんて表現して良いかわからない。

嬉しいのは確かだけど、それ以上に胸に何かが込み上げてくるような感じで言葉さえ詰まってしまう。


喜んでくれてありがとう、大好き


そう言いたくても口は思うように動いてはくれなくて。


ここにきて私は今まで思っていたよりも宗ちゃんに溺れてしまっていたことにようやく気づく。



「なまえ。」


気づけば頬には宗ちゃんの温かくて大きい手が添えられていた。

宗ちゃんの方へ顔を向ければ、いつもよりも、どんな時よりも優しい瞳と重なる。



「言ってみなよ、今思ってること。聞いてあげるから。」


優しい声は媚薬のようだ。

胸に込み上げてくる何かでいっぱいなのは変わらないのに、別人の口のように、でもしっかりと自分の気持ちを込めて口が動こうとするんだから。



「すき。死にそうなくらい」



次の瞬間には宗ちゃんの唇が重なった。


もう日の落ちた暗い誰もいない公園でただ1つの願いを込めて口付けを交わす。


ずっとこれからもこの関係が続くように


なんて事を願って良いのかは微妙に危ない所だけど。

ただ今はこの幸せが続く事だけを願うとしよう。




キィ キス!

(で、なんでお守りも?ていうか悪霊退散って書いてあるんだけど。)
(それは・・・・まぁ、・・もっと純粋に優しくなってくれるかなぁ、なんて!)
(・・・へぇ。)
(あああごめんなさい!ジョークです!ほんと、ほんとごめんなさい!調子に乗りました!)


The end. Thank you so much!

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