もうすぐなまえの誕生日だ。



なまえと一緒にいるようになってから、もう3年ちょっと。あいつは大学3年生。


3年も一緒にいれば今まで色んなプレゼントをしてきた。

クリスマスを含めれば6回プレゼントをあげた。

ネックレスをあげたし、ピアスも渡したし、マフラーをあげたし、靴をあげたし、財布を渡した。ネックレスに至っては2連でつけるのもいいと思って2回渡した。

特別な日を過ごしたくて横浜のホテルの最上階にあるバーに連れてって大人の気分を味わってもらったこともある。なまえは死ぬほど緊張していたけど、あれは連れて行ってあげて正解だった。

経験したことないことをさせてあげることによって、なまえはもっと良い女になった気がする。

まぁそれに関しては俺の自己満足だけれども。

俺がなまえを更にいい女に育てたことによって大学でなまえがモテてる現象に陥っているのも知っている。特に年下の男から。

年上女子の魅力がフルに出てるんだろう。そりゃそうだ、俺が一緒にいるんだから。

でも俺は心が広いから、別に気にしない。というか全然俺が負けるとも思わないし。

あいつが小学生のころからあいつを想ってる俺が負けるはずない、なめんな。こっちはギリギリ犯罪じゃない水面下なところを彷徨い続けたんだぞ。そんな気持ちがいつも勝っているからだ。





「なまえ、なんかほしいもんある?」

「へ?」


誕生日前の日曜日、2人で昼飯を食べながらほしい物があるかどうか聞いてみた。

サプライズが結構好きな俺だから、あんまり聞くことはないけれど、ある程度今までプレゼントをしたから逆に聞いてみたい気持ちになって、焼きそばを頬張りながら聞いてみた。

そうすると予想通り、間抜けな顔をしてなまえは俺と同じく焼きそばを頬張りながら「へ?」と声を漏らす。



「・・24cmのフライパン・・・・?」

「ちげぇ、そうじゃない。」


なんでフライパンなんだよ・・、と頭を抱えた。

テフロンはげたの、となまえは焼きそばをもぐもぐしながら言う。

そうかよ、そんなもんいつだって買ってやるよと言えばなまえはいえーいと焼きそばを啜った。



「今度誕生日だろ。」

「・・あ、なるほど!」

「それしかねぇだろ!」



なんで!そこで!フライパンなんだよ!と思わず机を軽くパンパンして訴えてしまった。

そんな俺を見ながらでもなまえは「へへ、」と笑って焼きそばを食べる。



「先生にほしい物、もらってばっかりだったから。」



とくにすごくほしい!っていうのがあんまりなくって、となまえは照れながら笑った。


そう、こいつの良いところであり、悪いところであるのは欲求が少ないことだ。

学生なんだからあれやりたいこれやりたいあれがほしい!って言えばいいのに、俺が休みの日でも部活で出かけたり、夜の飲み会があって遅くなって帰ってきたりしても何も文句を言わない。昔からそうだ。

もうちょっとこっちしてはあそこに連れてって!とか我が儘を言ってほしいのに全然言わないから腹が立つ。

大人の余裕をもって「その願いは叶えてあげられないけど、他のところで埋め合わせするから」とか言ってみたい。俺が。

そういつも思うけど、そこまで至らない。

なんなら、たまの1日休みの時に車を飛ばして遠くの知らないところへ連れて行ってやるだけで、なまえは子供みたいにはしゃぐのだ。



「おまえさぁ・・・、」

「うん?」

「・・・・いいや、なんでもない。」


なんか、お前の焼きそば食べて幸せそうな顔を見てたら、ものすごくどうでもよくなってきた。と言いそうになったけど、何も言わずに頭をぽんぽん、と撫でておいた。



「誕生日の日、1日全部使おうな。」

「あれ、部活は・・?。」

「大丈夫、その日は休むって1か月前から高野に言ってある。」


だから心配しなくていいし、行きたいところがあれば言えよ、と頭を撫でた。

そしてなまえはそれだけでまた子供のように表情をほころばせる。



「じゃあ、朝から出かけて、おいしいモーニングを海辺で食べて、海辺を散歩して、帰りに食べたいケーキを買って、あとは家で2人で過ごしたい。」


いいですか?となまえは遠慮がちに言う。

照れ隠しなのか、なまえの特有の焼きそばの食べ方として味変のお酢を全力で焼きそばにかけている。

ばかだな、こいつ。ほんとばか、なんて思ってふふ、と笑ってしまった。



「そんな簡単なこと、お安い御用だろ。」


それを基盤に、もっといい誕生日過ごさせてやるよとデコにキスを落とす。

なまえはこれがどんなキスよりも一番好きだ。

愛おしい気持ちと、敬愛を込めたこの額に落とすキスが。



「・・・うん。」


ありがとう、となまえは照れながら顔を真っ赤にさせる。


俺が小さななまえを見守ってきたのと、ある程度大人になってから一緒にいるようになってから俺がより俺好みになまえを育てたことによって、俺はもうなまえを離せなくなってしまったのは自分のせいだと改めて思った瞬間だった。



光源氏な物語
(お前は俺が育て上げたよな。)
(・・へ?・・・・う、うん、たぶん・・。)

*****
光源氏ぃな藤真を書きたかった。
ヒロインちゃんの気持ちはもうどうでもいいレベルで藤真の気持ち全面押しな話でした!
ソース焼きそばの後半戦にお酢をかけて食べるのが好きなのはわたしです!

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