「何でお前は俺と同じ年に生まれなかったわけ。」

「いや、なんですかその理不尽な言葉。」



高校を卒業して、だいぶ時間が経った。

正確に言うと、3年11ヶ月。もうすぐ大学を卒業しようとしてるくらい。



大学卒業を目前にしていた頃、一緒に夕飯を食べていた際に言われた。ちなみに夕飯はグラタン。前にグラタン作れる系女子になってくれと言われたから頑張って練習して、今となっては得意料理だ。


高校を卒業後、私と藤真先生は一緒に住んでいた。


今思えば卒業式から大変だった。

一緒に暮らすぞと言われ、その日に私の両親にあいさつしに行くと言われ本当に来て(親卒倒)、でも今までの経緯や先生としての立場からの謝罪、これからのことと、私をどれだけ大事にしてるか(それこそ私が小学生レベルのころから)(いやこれは親も引いていた)を藤真先生は丁寧に説明をしてくれて本当にその日に私は藤真先生とならなんでもOK!みたいなことになってしまった。

あの時のことは思い出すたびに感心してしまう。

ミルク感たっぷりのグラタンを口に運びながら、ほぼほぼ4年前のことを思い出してしまった。



「そもそも俺としては文句しかない。」

「えぇ・・、」

「合コンに誘われたから行ってきますとか普通に言うし。」

「・・・・、」

「お前、未だに俺のこと先生って呼ぶし。」

「慣れちゃったんで・・・・。」

「敬語だし。」

「先生だったんで・・・・。」

「お前にはもうちょっと冒険って言葉を心に刻んでほしい。」

「私は落ち着きって言葉を先生の心に刻んでほしい。」

「いいけどよ、別に。年の差なんて関係ねぇから。」

「はぁ。」


もう会話がいろんなところでしっちゃかめっちゃかだ。

私が合コンに行くのはよくないと思う。

わかる、わかるよ?でも私はふ、藤真先生のことが大好きなわけだし、事前申請してればOK!みたいなことを言ってくれていたし、それに甘えてたんだよ!確かに!となんだか心の中で自暴自棄になってしまうけれど、やっぱり女の子として経験しておきたいこともある。

それを理解してほしいという気持ちが藤真先生にもあったようで私に対して今まで何もおとがめはなかったようだ。



「俺ホント寛大だぜ。」

「そ、そうですね・・。」

「お前が大学行ってた4年間で大分金貯まったしな。」

「良かったですね。」

「・・・・お前意味わかって言ってる?」

「お金が貯まったんでしょう?」

「・・・・うーん。」


困ったような顔をしながら藤真先生はグラタンを口に運ぶ為に持っていたスプーンをお皿の上に置いた。

そうじゃねぇんだよ、と言わんばかりに藤真先生は私目を合わせず、困ったように人差し指で頬をかく。



「なまえ。」

「はい?」

「俺を名前で呼べ。」

「えぇなにいきなり・・!」

「呼べ。」

「ごり押し・・・!」

「結婚しよう。」

「だから名前呼びは・・・!・・・・・え?」


いま、なんて言った?

一瞬真っ白になった脳を無理矢理回転させて先生を見れば藤真先生は顔を赤くしてこっちを見ていた。いつもの、余裕のある藤真先生が、いない。



「俺、バスケ部の監督だから遠征とかでいない日多いし、休みの日だって部活だし、なんかどっか遠くにつれてってやれることなんかきっと少ないと思うけど。」


わかってんだよ、グラタン食いながら言うことじゃないって。

良い景色のバーとか、レストランとかでちゃんと言うべきことなんだってことくらい、わかってる俺だって!!!!!と、なんかいきなり切れ始めた藤真先生に戸惑いを隠せない。


え、え?、え?!と戸惑う私を見て、彼は深い、深ーい深呼吸をして、頭を抱え。

そして右手でぐっと前髪をかきあげてきれいな瞳で私を見つめた。



「新婚旅行で満足させる、プロポーズがこれじゃダメだって俺は分かってる。またどっかでやり直す。指輪も用意してないし。そもそも、今言うつもりなかったし。でももう我慢できなかったから言う。完璧な俺だから大丈夫だ。絶対幸せにしてやる。」


ずっと待ってた、その自信しかない!どうだ!と言わんばかりに藤真先生はニッと笑った。


困ったように、少し不安を持った先生。

だから似合わない早口で、思ったことだけを言い連ねた。

子どもな私のことを、ずっとずっと待っていてくれたのだ。



なにも、答えられない。

答えたえたいのに、声が出ない。

そんな私を、彼は分かってくれていて、私が口を開けられるまで、待ってくれた。




「先生は、翔陽バスケ部を全国で最高のバスケ部になるために先生になったんですよ。」


私の言葉に、先生の目が開く。

きっと、予想外の発言だったんだろう。



「だからしょっちゅう遠くに行けなくたって良い。一緒に過ごせればそれで私は十分幸せです。」



待ってくれて、愛してくれてありがとう。ずっと一緒にいたいって言えたら、私の中では完璧だったけれど、そこまでいえる余裕が、私にはなかったみたいだ。



「お前昔みたいにまた聞き分けよくしようとしてないよな。」


そんな私を見て、藤真先生は困ったように笑う。

何度も何度も、この困った笑顔を見てきた。



「してないです。ちゃんと心からそう思っていってます。」


大好きだから、藤真先生が・・。ちがう、健司が大切に今まで育んできてくれたことを、これから先、私が返したい。



「一緒に、いてもいいんですか。」

「おう・・・。」


ていうか一緒にいろよな、ずっと待ってたんだから!と健司が先生が大人のくせに、子供みたいに笑うから。年が離れていても、近く感じられるのだ。



「一緒に、いさせてください。」


大好きです。

そう一言、涙を流しながら笑顔で言えば、健司のキスが私の唇に落ちたのだ。



「待ったかいが、あったな。」


落ちてきたキスが私から離れ、愛おしそうに見つめてくれる健司の瞳。


私の前髪をかき上げる右手。

私の好きになった人は大人だけど大人じゃなくて、優しいけれど俺様な大人でした。




君がくれた物語
君がいたから、今の僕がいる

The end.Thank you so much!

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