「赤点取ったら校舎の上から紐なしバンジー。」
「うっそマジ?!」
鬼や!いじめや!と、なまえがギャーギャーわめき散らすので、自分の手に持っていたおやつ用のメロンパンを口に突っ込んでやった。
最初はモフモフしていたが、ようやく口に丁度いいサイズまで飲み込めたらしく、幸せそうにメロンパンを噛み締めている。
「おかわり!」
「あほ。」
にっこり笑んで右手を差し出し広げる。まだ手に残っているメロンパンをねだるので、デコピンを食らわしてやると額を押さえてなまえが悶えた。面白い。
「バンジーしたくなかったら勉強せぇや。」
「ていうかさっきのバンジーちゃうから!自殺行為!」
気になるメロンパンをちらちら見ながらも、きちんと反論するあたりがなまえらしい。何となく餌付けをしてやってもいい気分だったのでメロンパンをちぎって口へ入れてやると幸せそうにまた口を動かした。
「めろんふぁんを、・・はちゅめいした・・、」
「口の中のもんなくなってから言いや。」
一生懸命話をしようとするなまえの口に人差し指を当ててやると、素直に黙って口を閉じて噛む事に集中する。もぐもぐごっくん。パンに水分を取られて喉が渇いたのか、近くにおいてあった紙パックジュースを自分の下に引き寄せてストローを経由してごくごく飲んだ。
「メロンパンを発明した人って偉大!」
「ん、そうやな。」
「でもメロンパン口に入れたまましゃべってごめんな?」
下品やったねぇ、でも美味しくてつい口が動いてまう、と恥ずかしそうに頭をかいた。
ちゃんと言う事を聞いて口を閉じて食べたなまえに対して別に下品なんて単語は出てこなかった。素直すぎる奴だから、美味しいものは美味しいと伝えたくなったということだってわかっている。
しょうがない奴、と思っても笑顔がこぼれてしまった。
「ほれ、残りのメロンパンほしかったらちゃんと勉強し。」
「えー。・・実理ちゃんは勉強せんでええの?」
これから公園でバスケすっぞうっしゃああ!って、いっちゃんとヤジさん強制連行してしてたで、となまえは教科書に手を伸ばした。
あいつら・・テスト終わったな、またバスケ部全体で呼び出し決定や(お馬鹿さんが多すぎるので)
「南はバスケせんでええの?」
「俺はちゃんとテスト勉強するからな。」
「さすが薬屋さんの息子さんは頭の構造が違いますね!」
「おれはいたって普通や。」
ため息を1つついて教科書をパラパラめくる。
そう、普通にテスト期間勉強してるだけやねん。それやれば赤点はまあ少なくとも回避できるやろ、めっちゃ頭いい高校なわけでもないんやし、と残りのメロンパンを食べようとしたら、隙あり!となまえに取られてしまった。
「なまえ・・・、」
「ちょい待ち!」
袋に手を入れて中で一口サイズにちぎって俺を見る。そして一瞬にっこりした後、
「あーん!」
「・・・・・・。」
「ほれ、南!」
「・・・・そ・・れは、」
「南さん!」
どうしても食べさせたいのか、絶対に目を逸らさないでニッコニッコニッコニッコしている。
顔をそらしても絶対に手を下げないので観念して口を開けたら優しく口に入れられた。
「美味しい?」
「・・ん、」
「やっぱりメロンパンって偉大や!」
南があーんてお口開ける奇跡が起きるんやもの!と、なまえはそう満足そうに笑ってからまた幸せそうに残りのメロンパンにかじりついていた。
これで勉強もはかどりそうだ。
テスト、頑張るぞー!
(見て見て南!赤点無かった!快挙!) (偉いな。) (・・!南に褒められちゃったよ!ていうかなんでそんなに落ち込んでるん?) (バスケ部は連帯責任で補習や。) (・・・・・・。)
*** いっちゃん=板倉、ヤジさん=矢嶋
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