「なーにが『自分、あったま悪そーな顔してんねんな』や!自分かてカリメロみたいな髪型してるクセして!」



居眠りをしていていた罰として先生から命じられた体育館倉庫掃除。

南烈という男と2人きりでやらねばならないはずなのに、全く掃除をする気配が起きない。というかそんなことはもういっそのことどうでもいい!

あいさつをしようとした私に降りかかった「頭悪そうな顔」という暴言に今私は震えている!何だこの不届き者は!ふざけんなカリメロ!と私も負けずに暴言を吐いてやった。

その言い返しに南もプチンときたらしい。



「っ・・言うやん。」

「おー言ったるわ!カリメロ!」

「ブス!」

「ぶ…?!あんた女の子に向かってブスは最低や!思っても言ったらアカン!」

「ブス!」

「いくつやねんおまえええ!!!」


職員会議やら何やらで全部活が活動をやっていないため、必然的に体育館も使われていない今日。おかげさまで私と南の声がよく響き渡る。


そのあとも罵声を響き渡らせたけれど、一通りの悪口を言い終わった後にネタが尽き、あっちもネタが尽きたらしく、お互い息も絶え絶えに睨み合っているのが今だ。



「俺言ったこと何も間違ってないよな?!」

「はぁ!?ほんとありえん!なんで相手に悪口の同意求めんねや!間違っとるわ!なんでそんなに口悪いん!」


はあはあと息絶え絶えに言い合う中、睨みつけ合う。一歩も引いてやらないぜ!という勢いで睨む。

数秒威嚇試合が続いた、そんな中。

最初に睨みを中断して違う行動へ移ったのは南だった。近くにあったバスケットボールのカゴからボールを1つ取るとドリブルをしてバスケをしようとする。



「ちょ、さぼんな!」

「うるさいわ!」


俺の勝手やろ、と南は横目でちらりと私を見ると軽く翔けてレイアップシュートを決めた。

ゆらゆらとネットが揺れる中で小さくため息をついた南。

そんな姿を見て、思わずぽろり、と声が出た。



「上手いやん・・・。」

「・・・は?」

「上手やね、って言ってる!」


びっくりやー、と自然に思わずぱちぱちと拍手をしてしまった。

さっきの怒りはどこへ行ってしまったんだろう。

単純バカとよく言われるから、きれいなシュートを見て、そっちの方に意識が言ってどうでもよくなってしまったんだろうか。

そんな私の謎すぎる行動に、南が戸惑っているのが何となく伝わってくる。



「・・バスケ部やからな。」

「そうなん?」

「この前3年生引退して部長になった。」

「すご!」


部長とかなれるの世の中に限られた選ばれた存在だけや!と言えば、南はまた戸惑ったように視線を下にして、頬をかいた。戸惑う南は私にその表情と気持ちがバレないようにたろうか、ぶっきらぼうに口を開いた。バレバレだけど。



「・・・・単純て、言われへん?」

「んー・・たまになぁ・・・・て、また侮辱する気なん?」


キーッとまた怒りモードに突入しそうなわたしを見て、南は少しだけ眉を下げて笑った。それを見た瞬間、私も固まってしまった。南が意外ときれいに笑うからだ。



「・・・・失礼な奴やけど、うちあんた嫌いじゃないわ。」

「おう、俺もそれは同意したる。」


悪かったな、と南は小さく言った。

不機嫌だった理由を聞けば、好きな部活の時間が無く、しかもその上放課後居残りで体育館掃除をさせられるということに酷くストレスを感じたらしい。

なんやねんそれ、八つ当たりや。といえば悪いと素直に謝ってきた。

あぁやっぱりこいつはただ不器用なのだと自分の中で確信する。そう思うと表情がほころぶのを抑えられなかった。



「ブスは発言しなかったことにするわ。」

「おん、そうしてや。」

「あったまわるそー、は、取り消さん。」

「なんでやねん!!!」


私のツッコミに南は初めて子供みたいにくすくす笑う。

そんな南の笑顔を見て、少しだけ、怒っていることがどうでもよくなった。



「女子今体育バスケやねん。ちょっと教えてや。」

「ええで。レイアップは?」

「できん。いつもカット専門。」

「じゃあレイアップな。」


教えたる、とまた眉を下げて上品に笑う南に駆け寄った。




君との出会いはきっと必然で

(で、なんで掃除してないか言ってみ。)
(腹が・・、痛くて・・・。)
(うん・・・。)
(お前ら明日も掃除な。)

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