南と出会ったのはいつだったか。
覚えていないと言えば嘘になる。
ただその思い出は私の心の中だけに閉まっておきたい、それだけなのだ。
>>担任、とうとうジャイアニズム宣言
「みょうじー、お前今日残れー。」
今所属しているクラスではなく、まだクラス替えをしていない1年前ほどの帰りのホームルーム。
あとは帰りの挨拶をして帰るだけのはずだった。
今日の放課後は何を買い食いして帰ろうか、そんなことを考えながら周りの生徒と同じように自分の席におとなしく座っていたなまえは先生の発言に一瞬思考を止めた。
「・・・・は?!なんで?!」
「居眠りしてた罰で体育倉庫掃除や。」
「そんな殺生な!」
今日はたこ焼き明太子ソース食べるつもりやったんやあ!と思い切り立ち上がって叫ぶ。
「邪道な奴め。ソースで食え、ソースで。でも先生優しいからな。体育倉庫掃除してから、たこ焼き明太子ソース食え、許す。」
「あかんて!それじゃあ夕飯食べられへん!」
「じゃあ明日に回すんやな。」
このクラスでは俺が法律や、とジャイアニズム発言を放った。
きりーつ、きをつけー、れー。
間の抜けた号令とともに今日という日が終わったのである。
心の中で泣きながらなまえは鞄を持って席を立つ。
周りの友達には「ドンマイ」、「がんばれ」と言われてついでに笑われる。
何度も帰ろうと足を昇降口へと向けたが、どうせ明日になれば余計に重い罰を突きつけられるだけだと自分に言い聞かせて体育館倉庫へ向かった。
「お、よぉ来たな。」
体育の先生がいつもと同じジャージ姿で体育館倉庫前に居た。
1つため息をつくとなまえは倉庫の近くに鞄を置く。
「うち、数学の授業に居眠りしてただけなのに何で関係ない体育館倉庫の掃除なんですか。」
「汚いから。」
「ですよねー・・。」
はは、と笑って沈むなまえに先生は続ける。
「安心せぇ。お前1人ちゃうから。」
「え、ほんま?!」
「おん。・・・お、丁度来たわ。」
なまえの後ろの方を見て先生は笑って手招きをする。
振り返るとそこには隣のクラスで見たことのある男が居た。
「岸本どうしたんや。」
「・・・・あいつは腹下して帰りましたわ。」
「嘘やな。」
あいつ昼間めっちゃ飯食ってたのを学食で見た、と先生はニヤリと笑う。
「・・食いすぎて腹下したんスわ。」
「あー、ハイハイ。みょうじ、こいつは南烈や。とりあえずお前ら2人で掃除せぇ。」
あとでまた来ると言い残して先生はこの場を去った。
なまえは思った。
知らん奴と2人きり(しかも男)にするなんてどれだけ鬼畜なんだ、と。
隣に居る男をちらりと見ると、目が合う。
はじめまして、よろしく
居残り仲間にそう言おうとなまえが口を開こうとした瞬間、男の方が口を開いてこう言った。
「自分、あったま悪そーな顔してんねんな。」
南烈
出会いは最悪である。
(担任、とうとうジャイアニズム宣言:end)
「ラブロマンス・イン・体育館倉庫」に続きます
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