「さみー・・・。」
今日はバレンタインデー。スペルはわからねーけどバレンタインデー。
なまえを待ちながら、ポケットの中から細長い箱を取り出す俺。これは何か?それは遡る事1週間前の話になる。
「ノブ。」
「なんだよ、ねーちゃん。」
久々の部活がオフの日曜日。居間でいつも通り格ゲーをしていたら、背後から姉ちゃんに声をかけられたので一時中断して後ろを振り向いた。
「あんたバレンタイン何あげるか決めたの?」
「・・・は?」
という会話から始まったのだ。
ねーちゃん曰く、今年は外国と同じようにバレンタインは男から女へプレゼントを贈るのが流行っているらしい。
ふざけんな、クリスマスみたいじゃねぇか!と言ったら、「お前なまえちゃんにクリスマスプレゼントやったのか」と言われてしまった。
普通のカップルだったら一緒に過ごしたクリスマス。残念ながら部活の合宿で一緒にいてやれなかった。もちろんプレゼントも買いに行く暇がなくてやれなかった。だからスッゲー恥ずかしかったけど女だらけのデパートに一人乗り込んでなまえへのプレゼントを購入したのだ。
冬休みの部活が少し休みだった期間を利用して派遣でバイトしててよかったと思う。高いものじゃないけど、なまえが好きそうなシンプルなネックレス。これ買うのにどれだけの羞恥を捨て、勇気を奮ったか・・・・。
「てか男からあげる、なんて俺くらいしかやらなそうだよな。」
女子が力を入れるバレンタインデー。料理が出来る所をアピールできる機会だってクラスの女子が言ってたしな、と待ち合わせの公園のベンチに座りながら冬空を仰いだ。
「(ていうか早く来いなまえ・・、)
「ご、ごめん!遅れて!待った?!」
うおぉぉぉー!と心の中で叫んでいたら背後からなまえの声。思わず「うおっ!」と声を出してしまった。ビビった。そんな俺をよそに、少しだけいつもより可愛い格好をしながらチョコチョコと小走りしてくる。
「べ、別に待ってねー。」
「なら良かった!」
バスケ部ルーキーかつ、エース様が風邪ひいちゃやばいもんね!と安心したような笑顔を浮かべて鞄の中をガサゴソと探る。そしてまた一層笑みを深めて探し当てた物を俺に差し出した。
「はい!チョコ!頑張った!」
「買うのを?」
「つ、作るのを・・・!」
料理が苦手ななまえは絶対売ってるチョコをくれるのかと思ってた。だから嬉しさが込み上げてきて顔が真っ赤になりそうなのを抑える。
あー、そっかー、ありがとな、と照れ隠ししながら受け取ると、なまえはすごく嬉しそうな顔をしてくれた。
ねーちゃん、俺は彼女不幸者だ。こんなことで喜んでくれてるのに今までバスケばっかだった。少し反省する、と心の中でなぜかねーちゃんに謝る。
「ちょっと4回位爆発してね!ていうかブクブクなっちゃってね!チョコって直火にかけて溶かしちゃいけないんだって、知ってた?」
「いや知ってたけど、まさか4回爆発したのをくれる気か・・・?」
「あぁ、ち、違う!前もって練習したのが4回爆発しただけで、今あげたのは失敗してない・・・!・・・たぶん。」
なまえの目が泳いでるのは見なかった事にしよう。
ポンポン、と頭を軽く叩くように撫でてサンキュー、と言えばまた嬉しそうに顔を赤くしてなまえは笑った。
「じゃあ、俺もやる。」
「へ?」
「今年は逆チョコならぬ逆プレゼントが流行ってるらしい。」
そう言ってできるだけ余裕を見せながら細長い箱をなまえに渡した。
ちょっと戸惑いながらなまえはパカッと箱を開ける。中に入ってたネックレスを見るとビックリしたような目で俺を見た。本当にびっくりしてくれたようでポカンと口を開けるだけでなまえは何も言えずに俺とネックレスを交互に見るだけだ。
「お、俺なりの気遣いと言うか、なんというか・・・・!部活ばっかで構ってやれないし・・・・。」
日頃の感謝をこめてだな、と頬を掻きながらチラッとなまえを見ると、なまえは大好き!といいながら思いっきり俺に抱きついた。
たまにはこんなバレンタイン (おまっ・・!ここ公園・・・!) (もうノブ大好きー!)
*** 照れ屋で少し不器用ななノブが好きです。
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