大変です。



「じ、神君!もしよければ・・・!」



あろうことか、私、一応彼女なのに・・・・




「付き合ってくれませんか・・・・!」



宗ちゃん、告られてます。



事の発端は私が宗ちゃんを見つけ、近寄ろうとしたら知らない女の子に宗ちゃんが声をかけられた。

どうしたんだろう、何かの係りかな?そんな風に考えて近寄るのを一旦やめ、話が終わるのを待っていた。

・・・・が、



「(・・・え、移動?!)」



そう、移動を開始した。

声は聞こえないけど宗ちゃんは少しだけ面倒くさそうな顔をしているのがわかる。



「(・・・荷物持ち、とか?)」



今思えば私は何てポジティブシンキングガールなのだろう。

手伝える事があれば手伝おうと思って、後をつけたらこうなったのだから。




「・・・俺、彼女いるよ。」

「知ってます!けど、」

「けど、じゃないよ。彼女いるの知ってるくせに何で告白してくるかな。」



宗ちゃんは今まで見たこと無いくらい、冷たくて怖い目をしていた。笑ってもいない。

女の子は一瞬ビクッとしたけれど、両手を腹の前で祈るように組んで一生懸命耐えていた。



「好きだから、気持ちを伝えたいっていうのはダメなんですか・・・・。」

「伝えたって意味無いよ。」

「ひど・・・・!」

「酷い?でも俺は今の彼女が良いから。伝えられたって意味無いんだよね。困るし。」



ドクン、と胸が大きく鳴った。顔を思わず伏せる。

心臓がハンマーで殴られた気分。顔が熱くて、ドキドキが止まらない。

どうしようどうしよう。宗ちゃんがそんな風に思ってくれてたなんて‥‥。嬉しい、恥ずかしい、嬉しい、息ができない、嬉しすぎる。

うきゃああああ、と声にならない声で嬉しさを発散した。



「・・・・で、いつまでそこにいるの、なまえ。」

「・・・は?」

「は、じゃないよ。」



ばっ!と顔上げればそこにはもうさっきの女の子はいなかった。ポケットに手を入れて立っている宗ちゃんただ1人。

出ておいで、とこっちを向いた宗ちゃんの笑顔は恐ろしい。冷たい?いいえ、これは・・・!



「魔王・・・・!」

「意味不明なこと言ってないでこっちおいでって。」


おいで、というより宗ちゃんが笑顔でこっちに近づいてくるのだ。怖いことこの上ない。思わず後ずさった。

・・・・腕掴まれて逃げられなかったけど。



「ごごごごごごめんなさい!覗き見する気は無かったんです!荷物運びなら手伝ってあげようと思って・・!」

「荷物運び?何言ってんの?というかどもり過ぎ。」


しょうがないなぁ、と私の頭を撫でる宗ちゃん。どうやら怒ってはいないらしい。ほっと胸をなでおろした。



「で?どうだった?」

「・・・?何が?」

「俺が告白されてるの見て。彼女に言った言葉も彼女から言われた言葉も何もかも聞いてたろ?」



酷いと思った?


普段見せないような不安げな顔で私に問いかけた。酷い、というのはさっきの女の子に対して言った言葉だろうか。

確かに棘はあったし、少し冷たいと思ったかもしれない。

けど私からしてみれば、少し‥‥ううん、凄く嬉しかったのが事実。だってそれだけ宗ちゃんは私を見てくれてるってことだから。



「嬉しかったよ。今思えばちょっとあの子にやきもち妬いてたのかもしれない。‥‥かもしれない。」

「2回も言わなくて良いよ。でも‥やきもち焼いたんだ?」


珍しいね、と宗ちゃんは妖しさのかけらも無い優しい笑顔を見せた。


そして宗ちゃんは私に手を差し出す。



「帰ろ。」

「うん。」


今日という出来事は私たちを1つ成長させた。



大好きのまたその先へ

(なまえが妬いてくれるなんて珍しいからちょっとうれしいなー。)
(ちょ、ちょっとだけね、ちょっとだけ。)
(・・・・。)
(いやもうめっちゃ妬いたわー!)

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