「また負けちまった。」

明るく弾んだ声が、真っ白で無機質な一室に響いた。

控え室に戻ってきたヤローさんは何故か"嬉しそう"にしていた。そんな表情から一転、不満そうな私の表情を見て途端に眉尻が下がる。

「もしかして怒ってる?」
「だってヤローさん、負けたのに笑ってる。」
「あっはは!だって強いトレーナーがガラルに増える事は喜ばしい事やから。」
「何それ、ダンデさんみたいな事言って。」

モニターに映し出されたトレーナーがインタビューを受けていた。へらへらと笑みを浮かべながら誰でも言えそうな薄っぺらいコメントが更にわたしの神経を逆撫でする。

「何よ、ただ相性が悪かっただけでしょ。こんな奴、ルリナとカブさんにコテンパンにやられちゃったらいいのに。」
「まぁまぁ、落ち着いて。」

手元にあったリモコンを操作しモニターを消すと、控え室はまるでまどろみの森のようにしんと静まり返った。

「…ヤローさんはこんな奴に倒されるほど弱くない。」
「名前ちゃん。」

リモコンを握る私の手に、大きな手が重なる。ヤローさんは困ったように笑っていた。それが、私にはヤローさんが負ける事に慣れてしまったように見えた。

「君は僕に無いものをたくさん持ってるな。」
「なに、急に。」
「勝ち気な所、僕は大好きだ。」

ヤローさんのふにゃりとした笑顔に私はめっぽう弱い。それを分かっててやってるのか分からないけど、そんな顔されたら何も言えなくなってしまう。

「だから笑って、ね?チャンピオン。」

そう言うとヤローさんは私の頬に指を当て、くいっと口角を上げさせた。子供にするようなその仕種に自然と顔が綻ぶ。

「…んじゃ、今から一緒にワイルドエリアにカレー作りに行こ。その後バトルね。手加減抜きでいくから!」
「おう!」



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