「あなたね…いくらなんでもこれは……。」
「ごめん…本当にごめんね…。」

今朝の占いは最下位だった。ラッキーアイテムはかいがらのすずだと言うからポケットに入れてきたのに全くもって無意味だ。
師匠が育てた足の速いヤドンを追いかけている途中で清涼湿原のぬかるんだ土に足を取られてしまい、たまたますぐ近くにいたセイボリーも巻き込んで沼地にダイブしてしまった。
そして今、二人揃って泥まみれになり道場へ向けて歩いている。

「はぁ…怒る気力もありません…。」
「ごめんってば!戻ったらサイコソーダ奢るから!」

怒られると思いきや、道場に戻ると師匠もミツバさんも苦笑いで迎えてくれた。ミツバさんに着替えの用意をしてもらい、宿舎の隣にある大浴場へ向かった。ありがたい事に私達の試練はまた別日に振り替えてもらえるらしい。
大浴場にはもちろん誰もおらず、こうして一人贅沢にお風呂を楽しめるのなら泥まみれも案外悪くないかも…なんて不真面目な事を考えてしまう。
いつもみたいにみんなと一斉に入浴するのも楽しいけど、まるで温泉宿へ来たみたいで新鮮だな。

肌に付いた泥を洗い流してから湯船に浸かり、塀の向こう側に居るセイボリーに声を掛けた。

「セイボリー、お風呂気持ち良いねぇ。」
「そ、そうですね。」
「あっ!シャンプー持ってくるの忘れちゃった!貸してくれない?」
「全くもう、あなたという人は…!仕方ありませんね…。今浮かしますから!」

ふよふよとシャンプーが塀の上まで浮かび上がりこちらに向かって降りてくる。サイキッカーと言えどセイボリーに塀を透視する力は無いらしく、手探り状態のシャンプーは私の手の届かない所であちらこちら彷徨っていた。

「もうちょっと右で、下の方!」
「こうですか?」

シャンプーは私の手の中に収まる事無くそのまま降下し、容器の角が二つの膨らみの片方にむにゅりと食い込んできた。

「ひゃっ、」
「なっ!なななななな!?!」

セイボリー側にも何かに当たった感触があったらしく、超能力が途切れてシャンプーが勢い良く地面に叩きつけられた。

「何とも言葉では言い表し難い柔らかなものに触れたが…レディーとは皆ああなのか?…って、あの!そんなつもりではありませんからね!?」
「分かってるよ!でも胸に当たってびっくりしちゃった。」
「ヒャア!!?ワ、ワタクシ…あの…!!すみませんが先に上がります!セイボリーテレポート!」

セイボリーはそのまま脱衣所に行ってしまったらしく、一人残された私は足元に転がっていたままのシャンプーを拾い上げシャワーブースに向かった。あ、セイボリーにサイコソーダ買うの忘れないようにしないと。


「セイボリー、シャンプーありがとね。これさっき言ってたサイコソーダ!」
「え、えぇ…どうも……。」

それから暫くの間は何故かセイボリーと目が合わなかった。



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