いよいよガラル地方の恒例行事でもあるジムチャレンジが始まった。私は出場しないけど、お父さんはエントリーするって息巻いていたっけ。ヤローさんには暫く会えないけれど、たくさんテレビで観れるから嬉しいな。
テレビを点けると、ちょうど開幕式の途中だった。

≪それではジムリーダーの皆さん、姿をお見せください!≫

ローズ委員長の合図と共に、ジムリーダー達が姿を現した。一人一人が圧倒的な存在感を放っていて、ヤローさんがカメラに向かって笑顔を振りまいた途端、会場の歓声も大きくなった。
あぁ、やっぱりジムリーダーとしてのヤローさんは本当に格好良くって、素敵だ。こんな簡単な事しか言えないぐらい私はヤローさんにのめり込んでいた。
語彙力はどこかに置いてしまったらしい。このヤローさんへの気持ちを言葉にする事ができなくて、ただただヤローさんに想いを馳せながらクッションに顔を埋める。

「キー!」
「え?あっ、お父さん!」

キテルグマに小突かれテレビに目を向けると、若いトレーナーに混ざりパツパツのユニフォームを着用しているおじさんが居た。満面の笑みで会場中に手を振っている。ジムリーダー顔負けのファンサービスに、中継を観ている親族は皆顔を赤くしているだろう。

ちなみにお父さんは明後日ターフタウンでジムチャレンジを行うらしい。という事はヤローさんの戦っている姿も見れる。慌ててスマホでスタジアムの空席を確認すると、後列であればほんの少しだけ座席が残っていた。

「と…取っちゃった…!」

予約完了の文字と共にボールガイのイラストがスマホの画面で踊っている。初めての観戦が自分の父と好きな人のバトルって、よくよく考えたらこんなにシュールな事は無い。

「どっち応援しようかな。ね、キテルグマ。」
「クー。」


ジムチャレンジ当日、臨時ヘルプに駆けつけてくれたお母さんに園内の事を一通り説明してからタクシーでターフタウンに移動すると、既に街中はかなり賑わっていた。もうヤローさんはスタジアムで待機しているのかな。差し入れにクッキーを作って来たけど食べてもらえるのだろうか。不安と期待を抱きながらタウンの奥に聳え立つスタジアムの前まで足を進めた。

「すごい…この中で戦うんだね…。」
「クー!」

自動ドアが開き中を見渡すと、見慣れたおじさんがユニフォームに身を包み座っていた。

「お父さん!」
「キー!キー!」
「お!なまえとキテルグマじゃないか!応援に来てくれたのか?」
「えっと…まぁ、そんなとこ。」

ヤローさん目当てだとは口が裂けても言えないけど。私の歯切れの悪い返事に深追いはせずキテルグマとじゃれ合っていた。ジムチャレンジはクリアできたらしいけど、明日は筋肉痛で一日ダウンだろうな。


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