ガラルの木材だけを使って建てられた小さな幼稚園。そこには二十匹ほどのポケモンがのびのびと暮らしている。幼稚園は誰でも見学できるよう開放していて、身寄りのないポケモンの中で気に入った子がいればトレーナーになってもらう事もできる。

「みんな!おやつの時間だよー!」

私の声を合図にみんなが嬉しそうに駆け寄って来る。順番にモモンの実を配っていると、ドアが開いた事を知らせるベルが鳴った。

「こんにちは!」
「あのー…ポケモンの幼稚園というのはこちらで合ってますかねぇ?」
「えっ!ヤローさん!?」

そこに立っていたのはあの有名なジムリーダー、ヤローさんだった。テレビや雑誌でしか見た事がなかったけど実際はかなりがっちりとした身体つきで、何より凄まじく有名人のオーラが漂っていた。

「はい、ターフタウンのジムリーダーをやってます。ヤローです。」
「あっ、なまえと申します…!」

ヤローさんは丁寧に麦わら帽子を少し上げてにこりと微笑んでくれた。自分が持っていたジムリーダーのイメージとは真逆で、とても物腰の柔らかい青年だ。見た感じだと私と同じぐらいの年齢だと思う。

「な、何かご用でしょうか…?」
「知り合いからポケモンを育てるのがとてもお上手な幼稚園があると聞いたものでして、近くに来たついでに寄せてもらいました。」
「そ、そうなんですか!ありがとうございます。」

この幼稚園は、ポケモン達が驚くからという理由で基本的に撮影や取材はお受けしていない。一体誰がそんな風に言ってくれているんだろうか。そんな事を考えている間、隣に立っているヤローさんは目をキラキラとさせながらポケモン達を眺めていた。

「みんな小さくて可愛いですねぇ。ここにいる子達全て預かりのポケモンですか?」
「半分はトレーナーさんからのお預かりですが、もう半分ぐらいは身寄りのないポケモン達なんです。
例えばあそこにいるピチュー。道端で大怪我をしているのを見つけて保護したんですけど、すっかり良くなって今ではこの園のムードメーカー的存在なんですよ!」
「へぇ、それはすごい!」

すると、モモンの実を食べ終えたポケモン達がヤローさんの足元へ集まって来た。抱っこして話を聞いてくれたりおもちゃで遊んでもらえて、短時間だったけどポケモン達もヤローさんの事が大好きになったみたいだ。

「うん、評判通りだ。ここにいる子は皆とってもイキイキしていますねぇ。」
「ふふ、ありがとうございます!」
「ここは、なんだか元気をもらえますね。また来ても良いですか?」
「もちろんです!また見にいらしてください。」

出入り口までヤローさんを見送ると、にこにこと手を振りながらタクシーに乗って飛び去って行った。

ヤローさん、とても優しくて…それに格好良かったなぁ。


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