「こんにちは。」

ピィのお誕生日会を終えた数日後。時刻は十三時、お昼寝タイムが始まったばかりの時間だった。眠りに就いたばかりのメッソンの頭を撫でていると、ヤローさんが受付のカウンターから顔を覗かせていた。

「あっ…こんにちは。」

会えない間もずっとヤローさんに想いを馳せていた。その結果、一言目には"あっ"だとか"えっと"等と発語してしまい、とうとう私は満足に挨拶さえもできなくなっていた。

メッソンを起こさないように忍び足で受付に行くと、ヤローさんは眠っているポケモン達に気を遣って小さな声で話し始めた。

「なまえさん、少し話せませんか?」
「あっ、はい。」

振り向いてイーブイに添い寝をしているキテルグマにアイコンタクトを取り、ヤローさんと中庭に出た。ちょうど日が射していて、今朝水やりをした花壇の花達がきらきらと光を纏っている。
近くにあったベンチに腰を下ろすと、ヤローさんも同じように隣に腰掛けた。

「忙しい時にすみません。」
「とんでもないです!何かご用でしたか?」
「えーっと…なまえさん、明日って空いてますか?」
「明日…?」
「実は、バウタウンの市場できのみ祭りがあるんです。珍しい物もあるみたいなので良かったら一緒にどうかなと思って。」

きのみ祭り。聞いた事はあるけど一度も行った事が無い。明日はちょうど休園日で面会も無いし断る理由は無いのだけど…。ヤローさんは好きな人と行かなくて良いのかな。あまりダイレクトに聞くのも失礼だと思い、二つ返事でOKしたい気持ちをぐっと堪えて恐る恐る聞き返した。

「わ、私で良いんですか?他に誰かいらっしゃったり…」
「もちろん!ぼくはなまえさんと行きたいんです。」
「!…では、お願いします。」
「ありがとう!それじゃあ明日10時にここで。」

それから少しだけ他愛のない話をした後、ヤローさんは"明日のデート楽しみにしていますね。"と言い残しターフスタジアムに帰って行った。そして今、かつてないほど胸がばくばくと音を立てている。私、ヤローさんとデート、するんだ。イーブイの添い寝を終えてテーブルを拭いていたキテルグマに抱き着き、声をひそめながら先程のやり取りを伝えた。

「キテルグマ、私ヤローさんとデートの約束しちゃった…!」
「キ!!」
「服、服どうしよう!良いのあったっけ?」
「キ、キー!」
「えっ?割烹着はキテルグマが大切にしている物でしょ!」

今朝の天気予報では、明日は晴れるとお天気お姉さんが言っていた。せっかくだしサンドイッチをたくさん作って持って行こう。
それにしても憧れのヤローさんとデートだなんて、少し前の自分に言っても到底信じてもらえないだろうな。

あれ、そういえば何で私こんなにヤローさんに良くしてもらってるんだろう?


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