そうこうしているうちに目的地へ到着した。
楽しく会話をしていたからあっという間に感じたのだけど、それをペパーくんに言うのは何となく恥ずかしいのでここだけの内緒だ。
目立たない場所ではあるが、日当たりはとても良くカラフルなお花が所々に咲いている。

「素敵な場所!」
「だろー?ここ、俺のお気に入りスポット!んじゃ、ちゃちゃっと設置しようぜ。」

随分気に入っている場所らしく、誇らしげなペパーくんが微笑ましくて思わずくすっと笑ってしまった。

初めてのピクニックだったので足を引っ張ってしまわないか不安だったけど、そこはピクニックが趣味のペパーくんのおかげでスムーズに準備を進めることができた。

「さっきのミニトマト、食ってみるか?」
「え!食べたい!」

ペパーくんに駆け寄り、がばっと口を開けてミニトマトが口内に放り込まれるのを待つ。が、ペパーくんはミニトマトを片手に摘んだまま元々大きな目をさらにまん丸くさせ、ぱちぱちと瞬きをし、そのまま固まってしまった。

突然どうしたのだろうかと不思議に思ったが、ハッと我に返り慌てて自分の口をおさえた。やらかしてしまったことにようやく気付いて顔に火がついたようにドッと熱くなる。

「!!!違うの、違う…!お母さんがご飯作ってる時によく味見係をやってたから、癖で…!!」
「あっ、そ、っか。そうだよな!ははは…!」

友人達の前ならともかく、よりによって今日やっと打ち解けられたペパーくんの前でやらかしてしまうなんて。あまりの恥ずかしさに耳まで熱を帯びていく。穴があったら入りたいし穴がなくても掘って潜りたい。

「…こほん!んじゃ改めて、このミニトマトも味見してみ。」
「う、うん。ありがとう。いただきます…。」

ペパーくんに凝視されながらミニトマトを口に放り込んだ。ハリのある果肉を噛めばぷちりと中からゼリーが飛び出し、口の中に広がっていく。すっきりとした甘味と酸味が調和していていくらでも食べられそうだ。

「どうだ?」
「おいし……へへ。」
「だよなー!あのおっちゃんの店、野菜が美味いんだよ!」

ペパーくんは私との会話を続けながらもレタスや玉ねぎをリズミカルに切っていく。器用な人だ。手際が良いだけじゃなく、すらっと伸びた指先につい目を奪われてしまった。…手、大きいなあ。

「そんな見入るほど面白いか?」
「あっ、ごめん!ペパーくんって料理が得意なんだね。」
「あー…うちは親が忙しくてさ。小さい頃から自炊してたんだ。」
「そっか…。自然と身に付いたものなんだ。」
「そんなとこだな。うっし、できたぜ。これお前の分。」
「わあ!ありがとう!」

できたてのサンドウィッチをお皿に並べてもらい、こっそり鼻を近付けてバケットと野菜の幸せな匂いを肺いっぱいに吸い込んだ。

ロトムを呼ぶと、ポケットに入れていたスマホがふよふよと浮き上がった。気恥ずかしい写真撮影をさっさと終わらせてサンドウィッチに食らいつく。

「美味しい!ねえねえねえすっごく美味しいよ!こんなに美味しいサンドウィッチ、生まれて初めて!」
「な、なんかいきなりテンションぶち上げちゃんだな!?まあでも口に合ったようで良かったぜ。」
「だって本当に美味しいんだもん!ペパーくんの彼女になる人は幸せだね。」
「はっ!?な、なん、なんだそれ!彼女とか要らねえし!」

こんなに美味しいサンドウィッチをぱぱっと作れる彼氏って本当に最高だと思う。率直な感想だったのだけど、ペパーくんは大慌てで否定していた。


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