テーブルシティをゆっくり見て回るのは実はこれが初めてだ。晴天が良く似合うパルデアの伝統ある建物、隅々まで張り巡らされた鮮やかなモザイクタイル、眩しいくらいにきらきらと光り輝くバトルコート、活気で溢れている屋台。目に映る全てが新鮮で、瞬きをするのも惜しく感じた。

「すごいすごい…!」
「おいおい、いきなりハイテンションちゃんだな。そんな興奮することか?」
「だってこんな綺麗な街、私の生まれ育った地方には無かったもん!ねえペパーくん、あそこにアイスクリーム屋さんがあるよ!」

少し先にアイスクリーム屋さんのワゴンが見えて夢中でペパーくんの腕を引っ張った。ペパーくんは目を丸くしていたが、観光客のように浮き足立っている私を見て堪えきれずに噴き出した。

「っはは!お前、見てて飽きねえな。」

いつものきりりとした表情とは打って変わって整った顔を綻ばせて笑っている。そんな姿が新鮮で今度は私が目を丸くさせた。普段のペパーくんからは想像もできないけど、こんな風に柔らかく笑うんだ。凝視している私に気付いたらしく、ペパーくんは恥ずかしそうに口元に手を当てて軽く咳払いをした。

「な、なんだよ。」
「ペパーくん、笑ってるほうが絶対良い!」
「なっ…意味分かんねえ。ほら、先行くぞ!」
「あっ!待ってよ!」

そこからもう少しだけ歩くと、ペパーくんの行きつけだという食材屋さんが見えてきた。店先にはパルデア地方で採れた野菜が所狭しと並んでいる。

「見てみ。」
「わ、本当だ。ペパーくんの言った通りだね。」
「だろ?」

真っ赤なミニトマトが積み上げられているバスケットから一粒手に取り、私に見せてくれた。確かにミニトマトのヘタはしんなりとしている。

「ペパーくんいらっしゃい。おや、隣に居る可愛いお嬢さんは彼女かい?」
「違っ、こいつはそんなんじゃねえ!」
「はっはっは!若いって良いなあ。」
「違えから!おっちゃん、ミニトマト百グラムちょうだい。」
「あいよ、まいどあり!」

割り勘をする気満々で財布を出していたのにペパーくんに制止されてしまい、これ以上からかわれたくないらしく買った物をおじさんから受け取るとそそくさとその場を後にした。おじさんに手を振り、ペパーくんの背中を追い掛けた。

「少し歩くけど大丈夫か?」
「うん。」

テーブルシティを出てペパーくんがよくピクニックをしているという場所に案内してもらった。歩いている間は私の暮らしていた地方の郷土料理や思い出話を皮切りに、ポケモンのことやよく観ているテレビ番組の話で盛り上がった。ペパーくんはしっかり者で何でも一人でこなしてしまうから大人びて見えるけど、こうやって話をしているとやっぱり同年代の男の子なんだなと思う。

そんな風に他愛もない話をしながら歩いていたら、目的地に辿り着いた。


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