あっという間に昼休みになり、お昼ご飯を食べようと席を立ったところでクラスメイト達が声を掛けてくれた。ほんわかとしていてとても優しそうな二人だ。ようやくこのアカデミーで一緒にご飯を食べられるお友達ができて、ほっと胸を撫で下ろした。

食堂の空いている席に座って食堂のおばちゃんお手製のボリューミーなサンドイッチを食べていると、端っこの席でスマホを見ながら一人で黙々とサンドイッチを食べているペパーくんに気が付いた。

「ねえねえ、ペパーくんってどんな人なの?」

二人は顔を見合わせて、何とも言えない表情を浮かべながら小首を傾げた。

「そういえばナマエちゃん隣の席だもんね。」
「あまり学校には来ないんだ。親は有名な人っていう噂だよ。」
「口数も多くないし、友達と一緒に居るところも見ないよね。」
「そうなんだ…。」

悪い人ではなさそうだけど、正直あまり良くは思われていない気がする。早めに席替えしてくれることを祈るばかりだ。

昼休みを終えるチャイムが鳴り、他の授業を選択している二人と別れて家庭科室へ向かった。おずおずとドアを開けると既に先生が教卓の前でプリントを整理していた。

「はじめまして、今日アカデミーに転入しました。二年のナマエです。」
「きみがナマエさんか。ワガハイの城へようこそ。あまり緊張せず、肩の力を抜いて授業に参加してくれると嬉しい。」
「はい、よろしくお願いします!」

強面だがとてもキュートな服を身に纏ったサワロ先生に挨拶をしていたら後から入ってきた人によって席が埋まってしまい、またしてもペパーくんの隣だけが空いていた。

「隣、いいかな?」

スマホを触っているペパーくんに声を掛けたが勿論色良い返事をもらえるわけでもなく、控えめに会釈をされて終わった。

「ありがとう。」

とりあえずお礼を言って席に座ったが、何もしていないのにあからさまな態度を取られるのは流石に納得がいかない。ふつふつと沸き上がる苛立ちを抑え、先程連絡先を交換した二人に"またペパーくんの隣の席"とだけメッセージを送った。

チャイムが鳴り、家庭科の授業には珍しく課題の内容が書かれたプリントが配られた。二人一組になって食材を入手し、サンドイッチを作ってレポートを提出するというものだ。転入早々なかなかハードな課題である。

ペア作り開始!とサワロ先生が手を叩くとみんながざわざわと話し始め、あれよあれよとペアが成立していく。

「どうしよう…。」
「ム。ペアがまだ決まっていないのはペパー青年とナマエさんの二人だけだな。」
「あっ、は、はい。」
「申し訳ないが二人一組が今回の野外学習の決まりなのだ。したがって、レポートに二人の名前が無ければ失格となる。ワガハイとしては、ペパー青年とナマエさんでペアを組んでいただきたいのだが…。」
「…分かりました。」

私が何か言う前にペパーくんが返事をして、あっさりとペアが成立してしまった。

授業が終わったと同時にペパーくんは家庭科室から出て行ってしまい、私も慌てて机の上に転がっていた筆記用具をかき集めた。

「あ、ありがとうペパーくん。すごく助かった。」
「…この課題、俺一人でやるから。」
「えっ?」
「レポートに二人の名前さえ書いときゃそっちにも単位入んだろ。」

どうやら私には何もさせないつもりらしい。とうとう堪忍袋の緒がぷつりと切れてしまい、早足に廊下を歩いていくペパーくんの手首を掴んだ。

「ねえ、それでいいよなんて私一言も言ってない。」
「は?」
「だいたい何でさっきからそんなにつっけんどんな態度取ってくるの?」

掴んでいた手を振り解き、お返しに物凄い力で肩を掴まれてそのまま壁に突き飛ばされた。ペパーくんの突き刺すような冷たい目を前にすると何も言い出せなくなってしまった。

「お前、転入生だかなんだか知らねえけど調子乗んなよ。」

吐き捨てるようにそう言われ、じわりと視界が滲む。ペパーくんへの恐怖心だけじゃない。何も言い返せなかった自分が情けなかった。

「もうやだ、引っ越す前に戻りたいぃ…。」

最低、やな奴、大嫌い!


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