必修科目の授業が終わり、いよいよ家庭科の授業の時間がやってきた。組んでいるペアと隣同士で座るようにというサワロ先生の指示に従い、ペパーくんの隣の椅子に腰掛けた。
自分のクラスでも隣の席だけど、教室が変わるだけでなんだかペパーくんの雰囲気も変わって見えるから不思議だ。

「さて。まずは期日内に課題を提出してくれた諸君、ご苦労だった。これから順番に目を通していくので、名前を呼ばれたチームはワガハイの元へ来るように。それまでは一旦ペアの相手と気付きを共有し合う時間としよう。」

サワロ先生がそう言うと、教室が一気に騒がしくなる。私も何か話さないとと思いペパーくんの方を見たが、向こうも同じ考えだったらしく目が合い、心臓がどきっと跳ね上がった。

「か!課題、何だかんだで楽しかったね。」
「まあ…良い経験にはなったかもな。」

ガムを踏んでしまい狼狽えていたマフィティフもすっかり元気を取り戻したと聞かされ、ほっと胸を撫で下ろした。

「さて、次はペパー青年とナマエさんのペアだな。」
「あっ!はい…!」

名前を呼ばれ、慌てて立ち上がり教壇へ歩み寄る。他の生徒達は会話に夢中で特に私達のことは気にも留めていないみたいで、ある意味助かった。サワロ先生はにこりと優しい笑みを浮かべて私達を見下ろした。

「興味深く読ませてもらったよ。ペパー青年の食材の知識は申し分ない。そしてナマエさんも転入早々のフィールドワークで戸惑いもあっただろうが、臨機応変に対応してくれたこと、感謝申し上げる。」
「ということは…?」
「ペパー青年、ナマエさん。合格!」
「やった!」

どちらからともなくお互いの前に手を伸ばし、ハイタッチを交わす。課題には満点合格という吹き出しがついたプリンのスタンプがでかでかと押されていた。

「何事も一人で抱え込もうとせずに互いの知恵を持ち寄り、力を合わせながら解決の糸口を探すことの大切さを十分に理解してもらえたことを嬉しく思う。」
「先生、ありがとうございました。」
「こちらこそ。では、席に戻ってよろしい。」

席に着いてすぐ、ペパーくんに声を掛けられた。

「ナマエ。」
「ん?」
「課題進めるにあたって、色々ヤなこと言っちまったけど…ナマエと組めて良かった。」
「こちらこそ!私も気に触るような言い方しちゃったし、前にも言ったけどお互い様だよ。」
「…ありがとな。」

授業終了を知らせるチャイムが鳴り、いよいよお昼ご飯の時間がやってきた。ペパーくんが作ってくれたマーマレードサンド、早く食べたいなあ。



場所は変わり、食堂。
ペパーくんお手製のマーマレードサンドは母が作ったものと同じぐらい、いや、それ以上に美味しかった。
友人達は信じられないといった顔でマーマレードサンドを凝視している。

「ナマエちゃん、今そのサンドウィッチ、ペパーさんが作ったって言った?」
「ん?うん、そうだよ。」
「「…付き合ってるの!?」」
「えっ!?なっ…ないない!付き合ってるとか全然そんなんじゃないって!」
「でもペパーさん、いつもナマエちゃんのこと見てるよね。」
「手作りのサンドウィッチを渡してくるのも好きじゃなきゃしないよ。」
「ちょ、本当にそんな関係じゃないんだよ!」
「ペパーさんは置いといて。ナマエちゃんはどうなの?ペパーさん、好き?」
「うっ……好き、かも。」

とうとうペパーくんへの恋慕を認め、面白くなってきたらしく二人は黄色い声を上げた。恥ずかしくなった私は残りわずかだったマーマレードサンドを口に詰め込んだ。

「あっ、噂をすればペパーさん。」
「え!どこ?」
「残念、嘘でした!」
「ナマエちゃんったら一生懸命探してて可愛い!」
「二人の意地悪…。」
「ふふ!ごめんごめん。ねえ、昼休み時間まだあるし、ペパーさんのこと探してきたらどうかな?サンドウィッチの感想伝えてあげたらきっと喜ぶよ!」
「んー…うん、そうだね。そうしようかな。」

口の中に残っていたパンをミルクティーで流し込み、食堂を後にした。

ペパーくんに会ったら何て言おう。やっぱり"マーマレードサンド美味しかったよ、ありがとう!"かな。そんなことを考えていたら、お目当ての大きなリュックが廊下の先に見えた。リュックを背負っているということは、午後の授業は受けずに寮へ帰ってしまうのかもしれない。マーマレードサンドの感想を今すぐに伝えたくて、慌てて後ろ姿を追い掛けた。追い掛けるべきではなかったのに。


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