時折、隣から眠気を含んだ声が漏れる。そろそろ起きるかなと思い少しだけ肩をゆすると、綺麗なまつ毛が揺れ、スカイブルーを宿した目とばっちり視線が絡み合った。ペパー先輩の顔がみるみるうちに引き攣っていく。

「は!?俺また寝ちまってた!?!?」
「はい、ぐっすりと。」
「ナマエ、マジごめん…。」

よっぽど眠いんだなと思いくすくすと笑ってしまったが、ペパー先輩はというと大袈裟なくらい眉毛を下げてがっくりと肩を落としていた。

「あっ、あの!ちょっと休憩しましょう!」
「おー…。ちょっと俺サボりすぎちゃんな気がするけど…。」

キッチンへ向かっていく丸まった背中に着いていき様子を眺めていると、吊り戸棚からミルクパンとマグカップが二つ出てきた。
ブルーとピンク、それぞれのマグカップにはミニーブが描かれていて、何となくペアルックを彷彿とさせるそのデザインにふと女の嫌な勘が働く。
ペパー先輩が持っているフラべべのスマホケースもとてもラブリーだから、同じ感性でマグカップも選んだんだと信じたいけど。

「あの。ペパー先輩って、過去に付き合ってた人とか居ます…?」
「なっ!なんだいきなり!居るわけねえだろ!」
「そ、そうですか…はは、ははは…。すみません。」
「このマグカップは俺がイケてると思って買ったんだよ!悪かったな可愛いモン好きで!」
「ひいいごめんなさい…!」

頬を軽く抓られ必死で謝ると、ペパー先輩はぷいっとコンロのほうへ向いてしまい表情が見えなくなってしまった。

「大体、女子を部屋に入れたのもナマエが初めてだし。」
「そ、そうなんですか?」
「あとさ。変って思われたくないから、これ、言いたくなかったんだけど…。」
「…?」
「このマグカップ、こないだ購買で買ったんだ。お前とはこれからもずっとダチで居られるような気がして。だからそれ、ナマエ専用。」
「…へ!」
「………引いたか?」

振り向いたペパー先輩の顔はほんの少しだけ自信無さげで、慌てて首を横に振った。
友達止まりということを突き付けられて少し胸がちくりと傷んだが、それでも何も思われていなかった少し前のことを考えたら、まだ前進したほうなのだと自分に言い聞かせた。

「はあ、引かれたらどうしようかと思った…。ほら、ココア淹れたから向こうで休憩しようぜ。」
「は、はい!」

机に戻り、お疲れちゃん!というペパー先輩の軽やかな声を合図に、お揃いのマグカップを少しだけこつんと鳴らして乾杯した。


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