「美味しそう…!」
「んじゃ早速座って食おうぜ。」
「は、はい!ありがとうございます。」

大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、生きてて良かったって心から思う日が来るなんて思わなかった。
というか家庭科の授業の実習もすごく手際が良かったし、やっぱりペパー先輩って料理が上手なんだな。

差し出されたサンドウィッチを両手で受け取り、思いきりかぶりつきたいところをグッと我慢して齧り付く。みるみるうちに口いっぱいに野菜の甘みが広がり、表情筋が一瞬にしてぐでんと緩んでしまった。

「美味しい!!」
「口に合ったようで良かったぜ。」

マフィ子とマフィティフくんもあっという間にサンドウィッチを完食し、二匹とも感謝を伝えるように小さな目をぱちぱちと瞬かせてペパー先輩の足元に擦り寄った。

「ワフワフッ!」
「マフィ子、美味しかったね!」
「マフィ子っていうんだな。」
「は、はい!ずっと一緒に居る相棒なんです。」

美味しいサンドウィッチをいただいたおかげで心做しか緊張もほぐれ、若干たどたどしくはあるが気付けばペパー先輩の目を見て話せるようになっていた。

「実は先週の授業から気になっててさ。女子でマフィティフ連れてる奴初めて見たから、絶対話したいと思ってたんだ!」
「そうなんですか…!実は私も、同じことを考えていて。」
「やっぱマフィティフって最高だよな!
…あ、そういや名前聞いてなかったっけか。」
「あっ、そうでしたね…!私はナマエっていいます。」
「ナマエか。よろしくな!俺は、」
「ペパー先輩、ですよね?」

私が名前を呼ぶと、ペパー先輩は驚いたのか普段はきりりとしている目を丸くさせた。

「俺、どっかで名前言ったっけ。」
「あ、あの…画用紙に書いてあった名前がチラッと見えて、それで…!」
「なるほどちゃんだな!」

どうやら納得したらしく、ペパー先輩は顎に手を添えてうんうんと頷いた。というか…なるほど"ちゃん"!?そんな可愛すぎる表現、アリなの!??!知れば知るほど、ペパー先輩の魅力ってば底無しなんだなと感じる。

「これからもマフィティフのトレーナー仲間として、仲良くしようぜ!」

すっと差し出された手を見て思わず目を白黒させた。これはもしかして、もしかしなくても握手を求められている…!?ゴクリと唾を飲み込み、ペパー先輩の手を握り返そうとしたら突然横からぬっと現れた何かに頬を舐められた。

「ワフ!ワフ!」
「わっ、びっくりしたあ…!マフィティフくん?」
「っはは!お前もダチになれて嬉しいんだよな!」
「バフッ!ハッハッ…!」
「ぅわはは!くすぐったい!」

マフィティフくんだけでなくマフィ子も寄ってきて揉みくちゃになり、重さに耐えきれず地面に倒れ込んだ。

「よし!マフィティフ、マフィ子!どっちが早く取ってこれるか勝負だ!」

ペパー先輩が放ったボールは大きな弧を描き、二匹はそれを目で追い掛けながら大喜びで走っていった。どうやら草むらに落ちたらしくスンスンと辺りを嗅いで探し回っている。

「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございま、す。」

手首を掴まれ起こしてもらったが、思いのほかペパー先輩との距離が近くて一気に顔が熱くなったのはここだけの話だ。


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