ペパー先輩とお付き合いを始めてから数ヶ月が経ったある日の朝。今日はペパー先輩を母に紹介するため、一緒にコサジの実家へ帰省する。少し前に実家の母へ電話をした時にペパー先輩のことを話したら是非会わせてほしいとせがまれたのがことの始まりだった。

一人で実家に帰るなら適当な服でも良いけど、ペパー先輩と一緒なら話は別だ。昨夜からマフィ子とファッションショーを開催していたせいで、デスクの上はああでもないこうでもないとクローゼットから放り出された洋服達で埋め尽くされ、更には何層にも重なっている。

お気に入りのワンピースに身を包み、姿見の前でくるりと回ってみた。制服のズボンに慣れているせいで何となく心もとないように感じる。私のワンピースと同じ色のリボンをつけたマフィ子もお出かけが楽しみらしく、ハフハフと息を弾ませた。

「ペパー先輩、可愛いって言ってくれたらいいな…。」

せっかくだからと巻いた髪を揺らして、待ち合わせのエントランスへ向かう。私服姿で何度か会ってはいるけど、ワンピースを着て会うことはないから実は少し緊張していた。

目印の本棚の前でスマホを触っているペパー先輩を見つけて駆け寄ると、私に気付いたらしく目が合った。いつもと違うよそ行きの姿も格好良いなあ。

「ペパー先輩っ!」
「…え、」

ペパー先輩の手からスマホが抜け落ち、間一髪のところでロトムが機体を持ち上げた。ペパー先輩はスマホには目もくれず私を見て大きな目をぱちぱちと瞬かせている。
普段フィールドワークで泥まみれになっている所ばかり見られているから、おしゃれをしている私の姿は違和感があるのかもしれない。

「あの……?」
「あっ、すまん!めちゃくちゃ可愛くてびっくりした。似合ってるって言いたかったのに声出なくて…ダセェな、俺。」
「あっ、いえ、ありがとうございます…。あの!ペパー先輩もとても素敵です!」
「へへ。サンキュ!彼女の親に会うのにいつもみたいな外走り回る服じゃダメかと思って新しく買ったんだぜ。」
「ふふっ、お母さんもペパー先輩に会えるのすごく楽しみにしてるんですよ。行きましょ!」



階段を降りてすぐの場所でタクシーが停留しているのが見えた。私達が予約客だと気付いたのか、ドライバーさんはキャビンの扉を開けてにこやかな笑みを浮かべている。
ドライバーさんに目的地を伝えると、鳥ポケモン達の元気な声と共にキャビンがゆっくりと離陸した。

「うっ、」
「ペパー先輩、もしかしてタクシー酔いしやすいタイプでした…?」
「いや、タクシーは平気なんだけど、緊張で吐きそう…。」
「うちの親、そんな厳しいタイプじゃないので大丈夫ですよ!」
「そうは言ってもやっぱ緊張するんだよ!あー、昨日マフィティフに相手になってもらって練習してきたのに全部吹っ飛んじまいそう…。」

そう言うとペパー先輩はシートにもたれてずりずりと体勢を崩し、再び深いため息をついた。

紙芝居のようにどんどん移り変わるパルデアの景色を楽しんでいると、時間が経つのはあっという間だった。
実家の前に着き、ガチガチに緊張しているペパー先輩の手を引いてドアを開けるとパタパタと足音を立てて母が出てきた。

「ただいま!」
「おかえり、ナマエ!あらぁ!ペパーくん初めまして!ナマエの母です。」
「…!はじめまして、ペパーと、申します…!」
「やだ、ちょっとナマエ!随分とイケメンなボーイフレンドじゃない!」
「もう、お母さんのせいで引いてるでしょ!ペパー先輩、上がってください!」

リビングに通されてからは母の独擅場で、私のどこが良かったのか、告白はどっちからだとか、学校生活はどうだとか、主にペパー先輩への質問ばかりだった。
にっこりと笑顔を貼り付かせて母の相槌を打つペパー先輩の姿は、まるで借りてきたニャースみたいだ。
タイミングを見計らって、ペパー先輩を自分の部屋へ連れて行った。


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