「はは…は…。」

気の利いた返しも思いつかず乾いた笑いが漏れた。ペパー先輩も何と言っていいのか分からないみたいで目が泳いでいる。
笑い話に昇華させられるかどうか自信はあまり無いけど、いっそのこと"なんだよその待ち受け画面!"って笑って突っ込んでくれたほうがずっと良かった。

「引きました…?」

さっき自分がされた質問を、今度はペパー先輩にぶつけた。怖くて顔を見れず、ラグの縞模様を見つめることしかできない臆病な自分に吐き気がする。

「引いてはねえけど…。」
「…けど?」
「その…ちょっと期待した。」
「え?」
「さっき、お前とはこれからもずっとダチで居られるような気がするって言ったけど…内心はダチ以上になれたらってずっと思ってた。」
「ペパーせんぱ、」
「あのさ!言いたいこと分かったかもしんねえけど、俺、ナマエが好きだ。」

そう言い切ったペパー先輩の頬は赤く色付いていて、つられるように私の顔も耳も何もかも熱を帯びた。ドッドッドッと鼓動がいつもの何倍も早く大きな音を立てている。あっ、返事、返事しなきゃ。

「わ、わた、私もペパー先輩のこと好きで…好きすぎて待ち受け画面に、しちゃって、ました…。」

自分の奇行が途端に恥ずかしくなり語尾が小さくなっていく。ペパー先輩はそんな私を馬鹿にするわけでもなく、ぽんぽんと優しく私の頭を撫でてくれた。

「好きな奴と両思いって、こんなに嬉しいもんなんだな。」
「何だか、嘘みたいです…。」
「嘘なんかじゃないぜ。ほら。」
「って痛ッ!…お返しです!」
「うわっ、ちょ!」

本日二回目の頬抓りをお見舞いされ、仕返しにペパー先輩の顔に手を伸ばした。私達を見て遊んでいると思ったらしく、マフィ子達も寄ってきてハフハフと大喜びで転げ回ったり飛び跳ねたりしている。体重が約六十キロあるマフィティフくんに押され、耐えかねてバランスを崩してしまった。

「ひゃ、」
「あぶねっ!」

ペパー先輩が私を受け止めようとしてくれたが、そんな奮闘も虚しくそのまま後ろのベッドへ二人一緒に倒れてしまった。謝らなきゃと思ったのにペパー先輩の鼓動が私に伝わるくらいばくばくと速くて、喉元まで出た"ごめんなさい"は口に出すことなくそのまま飲み込んでしまった。

「先輩、心臓の音すごい。」
「う、うるせ!仕方ねえだろ、」
「私もドキドキしてるから、お揃いです。」

目の前の重力で垂れたネクタイに人差し指を這わせ、うわ言のように呟く。だけど待てど暮らせど返事が無くて、何か変なことを口走ったのかと心配になってちらりと様子を伺うと、ほんの少しだけ眉毛を下げたペパー先輩と目が合った。

「今のはヤバい。」

少しごつごつとした手で私の頬をするりと撫でた後、唇と唇が重なった。本当に触れるだけのキスで、いやらしいことは何一つないのだけど、唇が離れた瞬間に変な声が小さく漏れてしまい慌てて口をおさえた。

「…あんまり俺を惑わせないでくれると、嬉しい。」
「は、はい……?」
「はあ。全然分かってねえし、無意識ちゃんだな…。」


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