正式にネズさんとのお付き合いが決まった翌日、報告も兼ねてマリィちゃんをキャンプに誘った。マリィちゃんはネズさんから直接報告を受けたらしく、その特徴のあるツインテールを揺らしながら喜んでくれた。

「まさか本当に兄貴がナマエとくっ付くとは夢にも思わんかったと!」
「うらら!」
「やめてよマリィちゃん!モルペコも!」
「ね、ね、ナマエが兄貴とケッコンしたらナマエはマリィのお姉ちゃんになるの!?」
「結婚だなんてそんな…!」
「うららー!」

屈託の無いその笑顔を見て、心からそう思ってくれているんだろうなと思いじんわりと目頭が熱くなった。ネズさんと結婚だなんて恐れ多いけど、もう少しお互いを知れたらもしかしてもしかすると…なんて思うのはちょっとおこがましいだろうか。

「じゃあさ、今夜やる兄貴のライブも来るよね?」
「うーん…でも特に約束してないし…。」
「行こうよ!顔パスで行けるし!ね?」
「うん…それじゃあ行ってみようかな。」


マリィちゃんとは一旦別れ、また夕方にスパイクタウンのポケモンセンターで落ち合う事になった。とりあえずおしゃれをしなければと思い自分の部屋に駆け込み、息を切らしながらクローゼットの中に掛けてあるお気に入りのワンピースを鷲掴んだ。
ネズさんに少しで可愛いと思ってほしい一心で軽くメイクをしたし、毛先にトリートメントも塗った。ネズさんに早く会いたいな。

夕方になりおずおずとスパイクタウンのシャッターをくぐった。そういえばネズさんと一緒に歌詞を書いたのも、連絡先を交換したのも、お付き合いする事になったのも全部スパイクタウンだったな。
スパイクタウン内ではネズさんのファンの人が既にちらほら集まっていて、其処彼処にフライヤーが貼られ、物販にも人集りができていた。そんなスパイクタウンの雰囲気に気圧されながらもポケモンセンターに入るとマリィちゃんがエール団の人達と話をしていた。

「おーい、ナマエ!」
「ナマエさん!」
「こんばんは!」

三人の会話に混ぜてもらい、ネズさんの彼女は自分達の家族のようなものだからとエール団のお二人から物販のタオルとラバーバンドまでいただいてしまった。

「今夜のライブではネズさんもナマエさんに愛を届けーるみたいで…もごふ」
「えっ?」
「いや、すみません!私達は消えーるので!」

団員の人は何か言いたげな様子だったけどもう片方の人が慌てて口を押さえ、エール団の人達はそそくさと去ってしまった。

「どうしたんだろ?」
「ライブが始まれば分かるよ!」

タオルをヤローさんのように首元で結びラバーバンドを手首に装着して奥の会場に入ると既にスモークが焚かれ始めていた。ネズさんのライブを観るのはこれが初めてで少し緊張する。間もなくネズさんが登場し、観客の熱気がむんむんと漂う中ライブが始まった。後ろの方で観ていた私達に気が付いたらしくネズさんと目が合ってしまった。

「みんな!来てくれてありがとう!ウキウキな仲間と共に!行くぜ!スパイクタウンッ!!」

ネズさんの合図と共にポケモン達が演奏を始め、観客の熱量が頂点に達した。そうして何曲か歌った後、ステージが突然暗転した。観客が騒めく中、一筋のスポットライトがネズさんを照らした。

「この曲を…愛する人へ捧げます。」

聴き覚えのあるメロディーに思わず鳥肌が立つ。ネズさんの作詞を手伝ったあの時の曲だった。歌っているネズさんとまた目が合い、いつものニヒルな表情とは打って変わって柔らかな笑顔を向けられた。ネズさんは本当にずるい。気が付くと涙が溢れてしまっていて、それに気付いたマリィちゃんが優しく肩を抱いてくれた。


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