「長秀さま、また岐阜へ行かれるのですか?」
「ああ」
「私もともに参ります」
「ならぬ」
「参ります!」
「……」
長秀は気色ばんだnameの顔をしばらく眺め嘆息した。なぜこうもこの女子は好奇心が強いのか。今回に限ったことではない。そして口の立つnameに対して事なかれ主義である長秀はいつもやり込められ、結局は彼女の我を通されてしまうのだった。
困ったものよと思いながらも、nameが一緒であるのなら道中退屈しないであろうなと、長秀は先を思って小さく笑った。
「何が可笑しゅうございます」
「いや、何も」
笑んだ口元を隠そうとする長秀の腕を取り詰め寄るname。その肩にそっと手を置くと、長秀は僅かに彼女の身体を抱き寄せる。日が高いうちから、それも彼の方から斯様にに身体に触れてくるとは一体どうしたのだろうと不思議に思ったnameは隣の長秀を仰ぐ。
「私のような男には、お前のような女子が似合いなのかもしれないな」
「な、がひで…さま?」
寡黙な、夜の褥ですら甘言など滅多に口にせぬ長秀がこんな事を言うとは、もしかしたら熱でもあるのではないかと心配になりnameは彼の額に手を伸ばす。しかし長秀は微笑をたたえたまま彼女の手を制し、あろうことかそっと包み込むのであった。
ますますおかしいと困惑するnameを他所に、長秀は言う。
「熱などない。ただ…思ったことを言ってみたまで」
「本当にございますか?」
「ああ」
案ずるな、お前は何も。
逆に熱に浮かされたかのような気分のnameは、風に流されて行く彼の言葉にただ頬を染めながら頷くのであった。
【恋心というのは厄介だな】
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