部屋に入った途端、目に飛び込んできたのは床に座って泣いているブン太の姿。そして次の瞬間には、俺自身の身体に衝撃が走った。 ブン太が俺に、抱きついてきたからだ。 「ジャッカル……っ、俺っ、俺……っ!!」 「なんだよ、ブン太。どうし──……」 言いかけてふと気付いたのは、ブン太を抱き留めた腕に当たる柔らかい感触。けどいくらブン太でもここまで太ってなかったはず。 ──じゃあ一体コレは何だ? 恐る恐るソレを確認した時、俺は絶句するしか無かった。 「ジャッカルぅ……俺、男だよな!? な!!?」 あぁ、俺の知ってる“丸井ブン太”は男だ。そして今俺の前にいる奴こそが“丸井ブン太”。 けど俺の目の前に晒されているのは──谷間くっきりの巨乳。しかもただの巨乳ではなく、超特盛り。爆乳。 「なぁ、コレ何!? 朝起きたらこんななってたんだけど!? 俺何かした!? お前何かした!?」 「落ち着けよ、ブン太」 「落ち着け!? お前バカ!? 落ち着いてられるわけないだろぃ!!なぁジャッカル、俺どうしたら良い!?」 「あぁ、どうしよう……そうだな。どうしようか、ブン太?」 「なんでお前が混乱してんだよ!? なぁ、落ち着けよ!! 頼むから落ち着いてくれよ!!」 「あぁ、そうだよな。俺がパニクってたらダメだよな。よし、分かったから落ち着け、ブン太」 「あぁぁああぁぁぁぁぁっ!! 無理無理無理無理絶っっっ対無理だろぃ──……っ!!」 突然途切れてしまったブン太の声。 一瞬の沈黙の後に離れてブン太の顔を覗き込むと、ヤツは目を丸くしたまま固まっていた。 なんとなく、溜め息が出てしまう。 「……なんて顔してんだよ、ブン太」 「だって……だって、ジャッカルお前……お前、今、キス……」 「……んなショック受けなくても良いだろ。傷付くぞ、俺」 「勝手に傷付いてろよ。ジャッカルが悪いんだろぃ」 拗ねたように唇を尖らせる横顔に、さっきのような混乱した様子は無い。代わりに少し涙目になっているのは、無駄に騒いだ名残だろう。 ブン太の赤い髪を撫でれば、その瞳が俺を見上げる。 「落ち着いたか?」 「おう……」 「で、どうする?」 「お前が考えろよ、ジャッカル」 「……俺が!?」 「当たり前だろぃ、乳触らせてやってんだから。つか、何しれっと触ってんだよ。お前真性の変態?」 「あぁ、いや悪い。つい……」 乳がそこにあれば触りたくなるのが男の性──それが見たことも無いような巨乳なら尚更。 改めて見れば胸だけはグラビアアイドル顔負けの巨乳。スタイルはさほど良くないところが、なんとなくブン太らしい。 例えばこれが幸村や柳生ならスタイルも良かったんじゃないか、なんて──…… 「とりゃっ!!」 「痛ってぇ!! 何すんだよ、ブン太!?」 「今変な妄想してただろぃ? 立海を代表して天誅の跳び蹴り。ありがたく受け取りたまえ」 「──っ……仕方ねぇだろ!!俺は男なんだよ!!」 「俺だって男だ!!」 「今は女だろ!? その様子じゃ下も……っ!!」 しまった、と思った時には既に遅し。ブン太の頬を、雫が伝った。 「……っ、ジャッカルの、バカ野郎っ!! 他人事だと思いやがって!!」 「悪り。ごめん、ブン太」 「知らね。触んなバカ!!」 触んな、と言いながらもこうやって抱きしめさせてくれるのは、たぶん許すつもりがあるから。 髪を撫でながらブン太の顎を掬う。少し幼くみえる膨れっ面に少しだけ笑みを浮かべて、俺はその唇に自分のそれを重ねて──…… 「ぁ……んっ、ジャッカル……」 触れるだけのキスをしながら、ブン太のシャツの中に手を滑り込ませる。拒否されるかと思ったが、打って変わって耳に入ってきたのは微かな喘ぎ声。 「……良いのか、ブン太? このまましちまうぜ?」 「ん……っ、聞くな。それにちょっとだけ、興味もある」 泣いたり怒ったり誘ってみたり。時には殴るし蹴るし、テニスだと守りは全部俺に押し付けるし。なのに甘え上手だったりするし……本当、調子良いヤツ。 ──けどそこが、可愛いしブン太らしい。 ブン太の胸の感触と時折漏れる喘ぎ声を楽しみながら、俺はその赤い髪にそっとキスをした。 |