目が覚めると自分と良く似た、しかし優しい瞳が見つめていた。夢心地のままぼんやりと見つめていると、その瞳が慌てたように逸らされる。。


「……逃げんでも良いじゃろ、やーぎゅ」


向けられた背に腕を回すと、その鼓動が伝わってくる。速く波打つそれが、仁王には心地良い。

すみません、と言う柳生の小さな声が聞こえた。


「寝てもうたか……今何時じゃ?」

「11時を過ぎたところです」

「……は?」

「11時、過ぎちゃいました。今からじゃ終電も間に合いませんね」

「……お前何時から起きとったん?」

「10時くらいから」


何故起こさなかったのだろうか。その時間ならまだ間に合ったというのに。

思考がまだ微睡みの中にいる仁王の腕の中で、柳生がもぞもぞと身体を動かす。向き合った柳生の頬は、朱に染まっていた。


「朝まで一緒にいるのは嫌ですか?」

「……んなわけないじゃろ」


柳生の顎を掬って唇を重ねると、今まで以上の心地良さ。





彼等の蜜月はここからが始まりだった。








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