「柳生、誕生日おめでとう」

「おめでとう。はい、プレゼント」

「おめでとう、柳生君」

「おめでとう、柳生。いつも頑張ってるから俺達からプレゼントだよ」

「柳生は特別な」

「比呂士、おめでとう」

「おめでとう、ヒロ君」

「おめでとう」

「おめでとう」


部活の休憩中に、先輩達がプレゼントをくれた。赤や黄色のリボンがかけられたそれは、色とりどりで正に花のよう。


「ありがとうございます」


先輩達からの純粋な好意はありがたい。

礼の言葉と笑顔を返して受け取ったそれを鞄に詰め込んでいると、ロッカーに背を預けるようにして佇む仁王があからさまな溜め息をつくのが分かった。


「モテモテじゃのう」

「先輩方に悪意はありません。純粋に祝ってくださってるのです」

「どうだか。下心ある奴も絶対おるぜよ」

「仁王君は考えすぎです」

「しれっと名前で呼びよった奴もおるし……髪も撫でられとったな」

「……そうでしたっけ?」


先輩達からのプレゼントやお祝いの言葉は続けざまに貰ったから、正直細かい事までは覚えていない。

首を傾げて考えていると、仁王が小さく呟いた。


「俺もあんまり触らせてもらえんのに……」

「……拗ねてるんですか?」

「拗ねてないぜよ」


拗ねてるじゃないですか──言った言葉は小さすぎて、おそらく仁王には届いていない。本当に……いつになれば彼は大人になってくれるのだろう。

けれどそれには思い当たる事があって、仁王ばかりを責めるわけにはいかない。

少しだけ考える素振りを見せて、柳生は仁王の手を取った。そして──……


「これで我慢してください。もう少しで部活も終わりますから」

「柳生がチューしてくれた……。雨でも降るかの?」

「失礼ですね。あぁほら、先輩がお待ちです。次は練習試合でしょう? 早く行きたまえ」


余程嬉しかったのだろう。ニヤニヤと気持ち悪い程の笑みを浮かべたまま、仁王は踵を返す。それから走った先で待っていた先輩に、お前何笑ってんだよ気持ち悪い、と叩かれていた。良い様だ、と心底思う。


「仁王の扱いが上手くなったな、比呂士」

「柳君!? ……見ていたんですか?」

「駅前の喫茶店の紅茶で手を打とう」

「脅しですか?」

「気を利かせただけだ。久しぶりに二人で話をしようじゃないか」

「……分かりました」


あの喫茶店の紅茶は良い葉を使っているためか高いのだが──見られてしまったものは仕方ない。

それに久しぶりに柳とお茶というのも、悪くない。最近は赤也か仁王いずれかが必ずいたから、ゆっくり話す事も無かった。


「そうだ、比呂士」



──誕生日おめでとう



微笑んだ柳が差し出したのは、彼が良く行く本屋の袋だった。








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