「まあ、あれだ。俺、結婚すっから」
「青雉さん書類が…え?」
ソファーに寝転がりながら、無造作に、何の前触れもなく。唐突に吐き出されたその結婚という2文字。あまりに軽い口調で、いつも通の口調で言うもんだから、またどうでもいいことなんだろうなって思って危うくスルーしちゃうとこだった。
「結婚、ですか?」
「そ、結婚」
青雉さんが、結婚。青雉さんが、誰かの旦那さんになって、家庭を持って、お父さんになる。普通の男の人みたいな、人生をおくるの、かな。
「お相手は、その、一般の方ですか?」
「まあな」
「さぞ、素敵な方なんでしょうね」
「今まで会った中で、2番目にいい女だ」
「1番じゃ、ないんですか?」
「まあ、気にしなさんな」
青雉さんも、そんな風に、幸せそうに、笑えるんですね。何だか、青雉さんじゃないみたいだなあ。
「幸せに、してあげてくださいね」
「自信ねえけど、頑張るわ」
「あと、幸せになってくださいね」
「それは、自信あるから大丈夫だ。ありがとな」
「いえ、部下として喜ぶべきことですから」
まったく、本当に。嬉しいことだ。大将の中では1番にゴールインとなるわけだし、黄猿さんと赤犬さんはどんな顔するのかなあ。
「ああ、そうだ。結婚式を挙げるなら、呼んでくださいね。私、結婚式大好きなんです」
「すげえの挙げる予定だから、まあ楽しみにしとけ」
「はい!」
じゃあ、結婚式に着てくものを買わなきゃ。ああ、お祝いに何かプレゼントしたほうがいいのかなあ。それから、それから。
「あ、青雉さん!」
「ん?」
「おめでとうございます、結婚」
(次は間違えないで私を選んでくださいね)→続き?
2011/04/07.