筒久良さん



まさか、そんな、馬鹿な。携帯の画面に並ぶ文字を、もう20回くらいは読み直した。だけど何度読み直してもそこに書かれている事実は絶対に変わらない。最後にもう1度、恐る恐る見てみたけどやっぱり。
ぴちぴちの女子高生、青春真っ只中。清々しい春のお昼過ぎ、こんなに素晴らしい条件のみがそろっている今日という日にどうやら私は振られたようだ。


「最悪、だ」


つらい、苦しい、悲しい、胸をえぐられるような、やるせない、身を切られるような、うら悲しい。悲しさを表す言葉はたくさんあるけれど、今の私の気持ちはどれにも当て嵌まらない。目が勝手に瞬いて、次の瞬間には声をあげて泣いていた。


「ぎゃあぎゃあとやかましい」
「へ?」


私しか居ないはずの屋上、なのに後ろからそんな声が聞こえた。ちらっと振り返ってみると、クラスで1番、いや学年で1番浮いてる変わり者のエネル君が偉そうに寝転んでた。


「いつから居たの?」
「朝から」


ちょっとずれてるエネル君の答えを聞いて、涙が引っ込んだ。もう、何だかなあ。


「何がそんなに悲しい」
「笑わない?」
「面白いことでも言うのか?」
「そうじゃ、ないけど」


何か調子狂うなあ。


「振られた、の」
「…愚かなり」
「え、ひどっ」


笑うより酷いよ、愚かだなんて。エネル君は変わり者だけど顔は普通にかっこいいから振られたことなんかないのかもしれないよ、でも愚かだなんてあんまりだよ。


「何故泣く」
「だって、エネル君が愚かだなんて言うから」
「お前に言ったんじゃあない」
「へ?」


私にじゃないって、だってここには私とエネル君しか居ないんだよ。じゃあいったい誰に言ったの?まさかまだ誰か居るの?


「お前を振った男が、だ」
「あ、なるほど、そっか」


あれ、もしかして慰めてくれてるの、かな。だとしたら、ちょっと、ううんすごく嬉しい。


「ありがと」
「勘違いするな」
「へ?」
「別にお前を慰めたいわけではない。そんな愚かな男に惚れるお前も愚かだ」


やっぱり酷いよ、それは。エネル君って素直過ぎるんだなあ。その素直さは時に人を傷つける凶器となるんだよ、エネル君。


「何故泣く」
「だって、エネル君が」
「すぐに泣く女は嫌いだ」


更なる追い撃ち。私、今傷心中なんだよ、ねえエネル君。君は私をどうしたいのさエネル君。


「だが、泣きたい時は泣くのが1番いいと私は思う」
「エネルぐんっ」


何だかんだエネル君はやっぱり私を慰めてくれたんじゃないだろうか。そんな気がしてきた。言葉こそ刺々しいけど、それがエネル君なりの優しさなんだろう、多分。


「エネル君、ありがと」
「………」
「エネル君は知らないかもしれないけど私、同じクラスの×××っていうの」
「………」
「今日はエネル君と話せてよかった」
「知っている」
「へ?」
「お前とクラスが同じことも、名前も、誕生日も、血液型も、部活も、委員会も、家も」
「エネル君って、ストーカー?」


エネル君って、ヤハハって笑うんだ。









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筒久良さん企画参加ありがとうございます!
前々から学パロ書いてみたかったので、書いていてすごく楽しかったです。日記も読んでくださっているようで、ありがとうございますっ。なな、なんと私のサイトがオアシスですとっ?あああ、ありがとうございます!しかも私なんかが書く文を大好きだなんてっ、筒久良さんにそう思ってもらえてすごく嬉しいです!ありがとうございます、これからも頑張ります!
ではでは、企画参加本当にありがとうございました!

2011/03/05.






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