たかさん
「くだらん」
今は誰も居ない神の社に、私の声だけが落ちた。いつも口にするものとは違って、今の言葉にはいくらか重みがあった。自分で自分が分からなくなる、そんな壁にぶちあたるのは無能なやつらだけだと思っていたが、そうではないらしい。
「くだらん」
2回目の言葉は、いくらか軽かった。それは視界に×××がうつったからなのか、×××の手に林檎があったからなのかは私にも分からない。後者であったなら、私も少しは救われるだろう。
「ただいま、エネル」
「遅かったな」
「ごめんごめん」
遅かった、と言っても実際は10分も経っていないだろう。それでも遅かった、と言ってしまうのはどうしてか。これもまた、自分では分からない。
「×××、」
「ん、何?」
「いや、いい」
こいつの顔を見ると、何も言えなくなる。まず私より大きな丸い目が私を黙らせる。何度も瞬いてその睫毛を揺らす目が。次にいつも口角があがっている口が私を黙らせる。こいつの怒った顔は見たことがない。
自分以外の価値のないものに、こんなにも興味を抱いたのは初めてだ。だからこそ、分からない。
柄にもなくこいつを大切にしてやりたいと思うのだが、そう思えば思うほどどうしたらいいのか分からなくなる。
「ねえ、エネル」
「何だ」
「何か話してよ、私、エネルの声好き」
「声、か」
「全部、全部好きだよ」
こんなことを言わせて楽しんでいる私はどうかしている。ただの男でいたくないはずなのに、こいつの前ではただの男でしか居られない。何度となくこいつを怨んではみたが、まあ。最初で最後、これもいいじゃあないか。
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たかさんこんにちは、今回も参加してくださってありがとうございます!
好きすぎて愛し方が分からないエネル様、とのことでしたがうまくできていたでしょうか?気に入っていただけると嬉しいです。
そんな、どんなにリクエストが多くても無視なんてできないですよ!たかさんに今回もこうしてステキなリクエストをもらえて本当にありがたいです!
ではでは、企画参加本当にありがとうございました!
2011/03/10.