浅葱さん
「◎◎、」
「………」
「◎◎!」
「…何?」
1つのことに集中すると私は周りが見えなくなるらしい。いつもペルに怒られる。いつまでも子供扱いされてるような気がする半面、まあ助かっているところもあるから文句は言えない。
「ペル、大変だね」
「ん?」
「国に国王、ビビ様に加えて私の世話まで焼いてくれるんだから」
「そう思うならもっと訓練を重ねるんだな」
「はいはい」
「はい」は1回でいい、と言うように少し睨まれたからもう1度「はい」と言い直しておいた。
「まあ、最初の頃に比べれば、◎◎も大分成長したな」
「それはペルも同じだよ」
「そうだといいが」
「人の気も知らないでどんどん先に行っちゃうんだから、ペルはずるいな」
私とペルが護衛兵になったばかりの頃は、よく2人で上の人達に怒られてた。だけどそれがいつの間にか私1人になって、更には私を叱る人がペルになった。別に私が特別弱いとか、そういうわけではないんだけど。それでもペルの優しさに支えられている揺るがない強さには全く勝てないんだ。悔しいけども。
「多分、ペルには一生敵わないなあ」
「そんなことはないさ」
「だって私、飛べないし」
別に深い意味を込めて言ったわけじゃない。けど、何だかペルの目が悲しそうに見えたからちょっと焦った。
「ペル、私を乗せて飛んでくれたことないね」
「そうだな」
「飛ぶのって、どんな気持ち?楽しい?」
「どうかな」
私が思うに、飛ぶことってすごく責任を感じるんじゃないかなって気がする。だって、ただのほほんと飛んでればいいわけじゃないんだから。アラバスタの国民のことを気にかけながら、国のことを気にかけながら、国王のことを気にかけながら飛ばなきゃいけないんだから。出来ればその気にかけなきゃならないものの中に私も入っていればいいのにって。そう思ったら、あんまりにも無理な話過ぎるような気がして笑えた。
「何がおかしいんだ?」
「ううん、何でもない」
「そうか」
ペルが窓から空を見上げた。ペルに見られてる空は、いつもペルの近くに居られる空は、ずるい。ずるい。
「私………、空になりたい」
「◎◎っ!」
いきなり手を握られて、風が流れた。とん、と気付けばペルの心臓の音が聞こえるくらいに強く抱きしめられてた。耳元で息を吸う音だけが聞こえた。
「ペル、いきなり」
「何も言うな!」
私がこんなにペルに怒鳴られたのは、何年か前に大怪我をした時以来だ。ちょっと、怖い。
「ご、めんっ…ごめん、ペル」
「違う、別に謝らせたいわけじゃないんだ…すまない」
腕の力が緩んで、また強く抱きしめられてた。
「けど、空になりたいだなんて言わないでくれ」
「どうして?」
「まるで、遠くに行ってしまうみたいじゃないか」
ああ、分かった。ペルには、空になりたいっていうことが死を表すことみたいに聞こえたんだ。
「違うよ、ペル」
「…何が?」
「空は、何よりもペルに近いから、だから私は空になりたいの」
「……◎◎、びっくりさせたらすまない」
「ん?」
唇から、ペルの体温を感じた。
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企画参加ありがとうございます!アラバスタ、いいですよね!あさちゃんのアラバスタ是非読みたいです、わくわくっ。て言うか、あさちゃんの文が好き過ぎて私の捏造ペルが申し訳ないです…。
私のほうこそ改めて、よろしくお願いいたします!
これからも頑張っていきましょう。
ではでは、改めて企画参加、素敵なリクエスト本当にありがとうございました!
2010/12/27.