ネルさん



「お疲れ様ですクザンさん」
「お疲れ◎◎ちゃん」
「では、失礼します」
「まあ、ちょっと待ちなさいよ」

肩に置かれた大きな手が私の足を止めた。

「何か?」
「いや、何ってわけじゃなくね」
「何となくですか?」
「うーん」

青キジさんはいつも煮え切らない。私はまだそれに慣れることが出来なくて、少しイライラするような毎日が続いている。イライラと言っても別に本当に頭にくるわけではなく、逆に心配になってしまうような。
こんな大きな人を心配するのもどうかとは思うのだけれど、むしろ私は誰かに頼りたい派なんだけれど。そういうところで自分のペースを乱されているというのもイライラする原因の1つなのかもしれない。

「◎◎ちゃん、話す時に相手の目をじっと見てくるよな」
「そうですか?」
「そうですよ」
「そうですか」
「そうですよ」

本当のことを言えば、相手の目を見て話すのは無意識的なことではなくて意識的なことだ。私は相手の目を見るのが好きだから。口で話すよりもっと、手を繋ぐよりもっと、キスをするよりもっと、目と目を合わせるほうが何かが伝わるし、相手のことを知れるような気がするから。

「いけませんか、相手の目を見ることは」
「いけないわな」
「そうですか」
「おれからしたら、だけど」
「青キジさんからしたら?」

今も私の肩にある手にぐいと引かれて青キジさんとの距離が小さくなる。
さっきまで外で昼寝でもしていたのか、草のにおいがする。

「◎◎ちゃんにずっと見られちゃうとおじさん恥ずかしいわけよ」
「何だか、らしくないですね」
「あららら〜、らしくないときたか。まあそうだわな」

肩に置かれた手がまた引かれた。

「おれをそうさせてるのは◎◎ちゃんなんだけど」
「そうですか」
「そうですよ」

ほら、目から伝わった。










―――――
ネルさん企画参加ありがとうございました!
ほんのり甘めでクザンさんを困らせたい、とのリクエストでしたがいかがでしたでしょうか?私も個人的に困ってるクザンさんが好きなので、ネルさんのリクエストにどきどきしましたっ。
ではでは、素敵なリクエスト、企画参加本当にありがとうございました!

10/12/15.






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