かずさん



「ね、エネル!」
「何だ」
「私が記憶喪失になったらどうする?泣く?泣いちゃう?」
「お前じゃあないんだから泣いたりするか」
「エネルにとって私ってそれだけの女なんだ」
「◎◎」

左手で耳の下あたりを撫でられて、右手の親指で唇を撫でられた。

「んー、」
「私の目を見るんだ」
「なに?」

唇が触れるだけの、一瞬のキス。思わずエネルの胸を押した。

「そうやって優しくキスすれば何でも許されると思って」
「いつもはこれで黙るくせに、まだ足りないのか」
「………」

怒鳴り付けてやろうと思ったのに、いざとなると何だか言葉が出てこなくて。それがむかついたから今度は私からキスしてやった。

「珍しいな」
「うるさい」
「たまにはこういうお前もいい」

今度はさっきと違う、優しいキスじゃなかった。うまく言えないけど、少なくとも神様のするキスではなかった。

「もう、いいから」
「本当か?」
「もう許すから」
「そうか、ならいい」

ああ、何かしてやられた感じだ。なのに体がふわふわして幸せな感じだ。

「エネル、ずるい」
「何が」
「いっつも私ばっかりエネルが好きみたいで、いっつもごまかされてばっかりで、ずるい」

今度は私がエネルの耳の下あたりを撫でた。人を見下すような目が一瞬細くなる。

「お前は、私が今まで会った女の中で…1番頭が悪い」
「………」
「自分だけが苦しいと思ってる女は好きじゃあない」
「何が、言いたいの?」

返事の代わりにまたキスだ。私はエネルと違うんだから、ちゃんと言ってくれないと分からないのに。

「私の世界の中心は、何だと思う」
「そりゃ、自分自身でしょ?」
「正確には、自分自身とお前だ、◎◎」

エネルは、私の機嫌を直す為にただ何となく言ったのかもしれないし、本当にそう思ってるのかもしれないし、それは分からない。
けど、私にはこの形のないものが宝物のように思えるから悔しい。世界中のお金を集めても、買えない私だけの宝物。










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かずさん企画参加ありがとうございました!
エネル様でキスorハグということでしたが、とりあえずキスばかりになってしまいました。すみません私の中のエネル様がっ…。それでもかずさんに気に入っていただけましたら嬉しいです!
このサイトを神だなんてそんなっ。でも、エネル様の夢はあまり多くないのでそのお気持ち分かります。ありがとうございますっ。かずさんもお体に気をつけてくださいね!

ではでは、改めて素敵なリクエスト、企画参加本当にありがとうございました!

2011/01/01.






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