黒猫さん
小さな島の小さな本屋。1日に片手で数えられるくらいの人しか来ないから静かだし、古い本のにおいに満たされた落ち着いたこの空間。それが私の居場所。
「なァ!」
「………」
「なァって!」
「はは、はいっ?」
本に夢中になっていてお客さんが来たことに全く気づかなかった。慌てて顔を上げてみると、小さな動物と麦わら帽子をかぶった男の人が立っていた。
「あ、何か、お探しですか?」
「いや、おれじゃなくてチョッパーに聞いてくれ」
「チョッパー?」
「おれだ!」
本の中じゃなくても、動物って喋るんだ。世界って広いなあ。
「それで、何の本を探してるんですか?」
チョッパーさんに医学関係の本の場所を教えて戻ってくると、麦わら帽子の人がつまらなそうな顔で私を見てきた。
「本は、嫌いですか?」
「肉は好きだ!」
「そうなんですか」
「あァ!なァ、本って面白いのか?」
「はい!じゃあ、試しに1つお話を聞いてみますか?」
「なるべく分かりやすく頼む!」
「はい。昔々あるところに…」
私が小さい頃に、よくおばあちゃんがしてくれた偉大な勇者のお話をした。私が口を開くたびに麦わら帽子の人は大きくうなずいて、笑ったり焦ったりして聞いてくれた。こんなに楽しい、気分になったのは初めてだ。
「終わり、です」
「……っ」
「あ、あの?」
「お前すげェな!お前の話すっげェおもしろかったぞ!ウソップ並だなァ!」
「そ、そうですか?ありがとうございます!」
いきなり大きな声を出されたから少しびっくりした。ウソップって誰だろう?けど、喜んでもらえて本当によかった。
「なあなあ、もっと色んなの聞かせてくれよ!」
「は、はい!」
そのあともチョッパーさんが戻ってくるまでいくつかのお話をした。あんまりにもあっという間に時間が過ぎて、私のほうがまだ話し足りないくらいだった。
「ありがとうございました。機会があったら、また是非いらしてくださいね」
「探してた本が見つかっておれも助かったぞ、ありがとな!ルフィ、行こう!」
あ、麦わら帽子の人、ルフィっていうんだ。最後に知れてよかった。
「さよなら、チョッパーさん、ルフィ…さん?」
チョッパーさんはもう出て行っちゃったのに、ルフィさんは私の正面に立ったまんまだ。
「ルフィさ、」
「絶対、また来るからな」
「え?」
「おれ、お前の話好きだ!」
「あ、ありがとうございます」
「だから、絶対また来る!」
「……はい」
ルフィさんがまた来るその日まで、ルフィさんが好きそうなお話をたくさん探しておこう。
「私も、ずっと待ってます!」
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黒猫さん企画参加ありがとうございます!ルフィで切甘ということでしたが、うまくまとめられなくてごちゃごちゃになってしまったような気がします。少しでも黒猫さんに喜んでいただけたらと思います!ルフィは書いていると表情が浮かんで来るので、にやにやしながら書かせていただきました。書いていて本当に楽しかったです!
ではでは、素敵なリクエスト、企画参加本当にありがとうございました!
2010/12/30.