旅人さん



ぼーっと空を見てたら、いつの間にか隣にアーロンが居た。足をちょっと動かしたら海がちゃぽんって音をたてた。

「楽しいか?」
「全然」
「そうか」
「アーロンは楽しそうだね、何だか」
「あァ、お前と居ると暇しねェからな」
「そっか」

また空を見たら、アーロンの手で遮られた。

「なに?」
「気にするな」
「そっか」

アーロンに目隠しされたまままたぼーっとしてた。

「あ、そういえばさ」
「ん?」
「私、アーロンに手紙書いたの」
「お前が?珍しいな」
「うん、でもね」

今もまだ目隠ししてる手をどけて、その手に唇を押し付けた。ちょっと驚いた表情のアーロンが何だか可愛い。

「文章は苦手だから、直接伝えることにしたの」
「…名案だ」

ぎゅっと肩を抱かれた。私の心臓の音が聞こえちゃいそうでちょっと怖くなった。

「私ね、アーロンを好きになる為に生まれてきたんだと思うの」
「本当にそうならいいのにな」
「あとね、私がアーロンにずっとくっついてたい理由は2つあるんだよ」
「好きだから、か?」
「1つ目の理由はね」

2つ目の理由はね、アーロンの服に、体に私のにおいが染み付いてとれなくなればいいのにっていう理由。だって、そうしたらアーロンは私のことをずっと考えていてくれるし、アーロンに寄ってくる女の人もちょっとは減ると思うから。

「2つ目は?」
「やっぱり教えない」
「残念だな」
「だってさ、ちょっと恥ずかしいし」

でも、私の手は勝手にアーロンの服をつかんでぎゅっと抱きしめた。

「あとね、私がもし神様だったらアーロンを神様にしてあげる。私がもし海軍だったらアーロンだけは捕まえないであげる。私がもしナミだったら、ずっとずっと海図を書き続ける。私がもし、」
「◎◎、もういい」
「アーロン」
「お前の気持ちは充分に分かった」
「ほんと?」
「あァ」

私の気持ちが100あるとしたら、そのうちの1でも伝わったらそれでいい。私のこの気持ちがちゃんと伝わるんだったら、たった1でも文句は言わない。

「私がもっと、アーロンに利用してもらえるような女だったらよかった。そしたら、ずっとアーロンと居られるのに」
「◎◎」
「ん?」

いきなり、ほっぺをぎゅっとつねられた。アーロンの力は強いから、すごく痛いよばか。

「別にお前が利用出来る女でも出来ねェ女でもんなこた、どっちでもいい」
「ほんと?」
「今現在、利用出来ねェお前を近くに置いてんのが何よりの証拠だろ」
「…痛いよ、アーロン」

涙がちょっと、海に落ちた。










―――――
旅人さん、企画参加ありがとうございます!アーロンさんでほのぼのということでしたが、思いの外ほのぼのが難しいことに気づきました。なのでほのぼのとは程遠いものになってしまっているかもしれませんが、大目に見ていただけたらな、と思いますっ。
ではでは、素敵なリクエスト、企画参加本当にありがとうございました!

2010/12/30.






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