「×××ちゃん」
「おはよう」
「愛してるよ」
「ありがとう」
「今日も可愛い」
「そう?」
「ああ、俺は幸せだ」



朝から糖度の高い彼の声にうんざりする。こんな気持ちに気づいたのはいつだったかな。自分が嫌になっちゃう。



「ねえ、コーヒーお願いしてもいい?」
「喜んで」



キッチンに向かう彼に聞こえないように小さく息を吐いた。彼のことは本当に好き。好きだから疲れる。彼の口から自然に出てくるたくさんの言葉にうんざりする。だってそれはその他大勢の女の子にたいしてでも出てくるいわば作り物みたいな物でしょ。私だけにくれる物じゃない。



「ゾロ」
「あ?」
「私に好きって言って」
「はあ?」
「愛してるって言って」
「んなもん言えるわけねえだろ」
「なんで?」
「そんなん軽々しく言えるのあのクソコックぐれえだ」



キッチンに向かうゾロをつかまえて更に気分が沈んだ。ほんとその通りだってのはわかってるよ。的確なことをおっしゃいますねゾロさん。あくびをしながらお風呂に向かった筋肉質な背中を見送ってキッチンの方を見るとちょうど、彼がコーヒー片手にこちらに向かってくるところだった。



「あいつと何話してたの?」
「んー」
「俺には言えないこと?」
「そう、秘密」



ねえ、そんな困った顔なんかしないでよ。でもそんな顔も、すごく好き。



「サンジ」
「なに?」
「好き」
「俺は愛してる」
「だめ、もう好きとか愛してるとか可愛いとか全部禁止」
「どうして?」
「本当に私のことが好きなら、他の人に言うみたいな安いこと言わないで」



きっと私はそうじゃないと愛されてるって思えないから。





(私はどこまであなたに愛してもらえるのでしょうか)

20150530.

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