ルッチが荒れてる。私が久しぶりに帰ってきたエニエス・ロビーはその話題でもちきりだった。私にしてみれば、ルッチはいつも不機嫌だし、陰湿だし、乱暴だからたいして気にはならない。ただ、島中に広がるぐらいだ…今ルッチに会ったら面倒なことになるに決まってる。面倒事はごめんだ。できれば会いたくないな、さっさと長官に報告して部屋に戻って寝ちゃおう。


「何で、居るかなあ」


私のベッドの上にだらしなく横たわっているのは間違いなくルッチだ。ベッドの近くのスタンドライトは壊れてるし、床にはお酒のボトルが散らばっている。赤い染みやら茶色い染みやらで芸術的になったソファー。どうやらルッチが荒れてるってのは本当みたいだ。まったく、人の部屋をこんなにしておきながら、その張本人が人のベッドで気持ちよさそうに寝やがって。もうだいぶ長くルッチと仕事をしてきたけど、今でも理解できない。
仕方ない、落ちているボトルをとりあえず拾い集めてみる。よくまあ1人でこんなにあけたもんだ。染みはもう面倒だからソファーごと新しいのにしよう。ひしゃげたスタンドライトに手を伸ばすと、ベッドの上の塊が小さく動いた。


「ルッチ、起きた?」


起きた?じゃないだろ…自分で言ってちょっと後悔。


「…名前か」
「ただいま」
「ああ、」


爪が食い込むくらいの力で肩をつかまれた。ルッチが本気を出したら私の肩なんてきっとすぐに粉々になっちゃうんだろう。


「お前…どこに行ってた」
「どこって、任務に」
「バカ野郎」
「は?」
「お前がいないとどうにかなりそうだ」


バカ野郎はこっちの台詞だバカ野郎。



2011/08/04.

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