「なあ、名前」
「何ですお頭?」
「俺の暇潰しに付き合ってくれないか?」
「いいですよ、何するんですか?」
「これだ」
お頭が取り出したのはハート、ジャック、スペード、ダイヤのカードがそれぞれ13枚ずつあるあれ。ただのカードゲームなら私にも出来るし、どうせ私も今日は暇だ。断る理由なんてない。
「いいですよ」
「負けたほうは勝ったほうの言うことを聞く、いいな?」
「…いいですよ」
お頭はひどく楽しそうにカードを配る。
「ずいぶん楽しそうですね?」
「当たり前だろ、俺が勝つに決まってるんだからな」
「どこから来るんです、その自信」
「何だ、お前知らないのか?」
「何をです?」
「俺は、この船の誰にも負けたことはない」
「…う、そだあ」
「疑うならベックマンにでも、聞いてみるといい」
「遠慮しときます、何かほんとっぽいですし」
ふう、と体から空気を送り出して目を閉じた。とんでもない勝負を受けてしまった気がする。
「お頭、やっぱり」
「諦めろ。俺の勝ちだ」
「おかし、ら」
あー、もう。ほんとずるいなあ。もしかしたら無敗なんて嘘かもしれないし、まぐれで私が勝てるかもしれないのに。まあ、いいか。こういうのも。
2011/08/03.