「私さー、アーロンさんのことすっごい大好きなんだよねー」
「………」
「ね、聞いてる?」
「俺に言っていたのか」
「クロオビと私以外居ないでしょ!」
「チュウが帰って来た」
「えー?」


気づくとさっきまで後ろにあったクロオビの背中がなくなってて、代わりに目の前にチュウが居た。


「どうした?チュッ」
「クロオビにね、アーロンさんの話してた」
「名前は本当にアーロンさんが好きだな」
「当たり前!」


クロオビはいつもすぐに居なくなるけど、チュウはいつもちゃんと話を聞いてくれるから好きだなー。


「あ、でもね」
「ん?」
「アーロンさんから好きって言われたことない」
「それって普通逆なんじゃねえのか?チュッ」
「何が?」
「いや、普通は女のほうが恥ずかしくて好きって言えない…とかじゃねえのか?」
「そうなのか…」


そんなもんなのかあ…。でも私普通に好きって言っちゃうしなあ。もしかしてアーロンさん恥ずかしいから好きって言ってくれないのかな?だとしたら…。


「めちゃくちゃ可愛い」
「は?」
「いや、こっちの話」
「そうか…チュッ」
「あっ、」


ちょうどチュウの後ろのほうに、ちらっとアーロンさんが見えた。アーロンさんもこっちをちらって見たからちょっとだけ目が合った。心臓がより大きく血液を送り出す。一瞬だけ、息が苦しくなる。じんわり体が熱くなって、アーロンさんはあっという間に私のすぐ前まで歩いてきた。


「アーロンさん、どうして私に好きって言ってくれないんですか?」
「さあな」
「じゃあ、どうしたら好きって言ってくれるんですか?」
「お前がもう少し大人になったらな」
「意味わかんないですよ」
「いずれ分かる」
「えー」


私の好きより、アーロンさんの好きがずっとずっと重いものなんだって知るのは、まだまだずーっと先のこと。



2011/07/15.

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