私はエネルの足の上に座るのが好き。私の定位置?違うけど、でも、好き。私がここに座ると、エネルはいつも覆いかぶさるように抱きしめてくれる。少し苦しい、けど嫌いじゃない。白い腕がぎゅって私を包んで、次に胸、お腹がぴたってくっつく。最後にはエネルの唇がすぐ耳元にあって、くすぐったくなる。でも、耳元でそのくすぐったさを感じたその瞬間、幸せだなって感じるの。ありきたりではあるけどね。
「エネルは、何になるの?」
私のこの質問は少しおかしい。エネルはもう神になってる。じゃあどうして私は聞いたんだろう。神の後を、誰よりも先に知りたかったのかもしれない。
「さあな、何になるのか私にも分からん」
「うーん、エネルはね、きっと」
何だろう。色々と候補は浮かぶけれど、どれもありふれていてくだらないような気がして。空気と一緒に飲み下した。
「何にもならないよ、エネルはエネルのままだね、きっと」
私がエネルと居る限り、私は私のままであり続けようとするからそれと同じに、私と居る限りエネルもエネルのままであってほしいのかもしれない。
「そうなんだろうな、たぶん」
「そうなんだよ、たぶん」
生温い風が吹いた。ここで吹く風は、他の場所で吹くどの風とも違う気がするのはどうしてだろう。神の島だからか、ううんたぶんそんなの関係ない。神ってやつが隣に居てくれるからだ、たぶん。ああ、何だかそう考えると一気に愛しさみたいなものが大きく膨れ上がってきて、苦しい。
「お前に難しい顔は似合わん」
「私だって考え事することくら、」
あーあ、何かもういいや。鼻と鼻がぶつかって、おでこもくっついて、髪の毛に指が絡んで。愛しい、愛しい、愛しい。
「あげる、全部あげるよ何もかも」
私の全部、声も手も足も内臓も命も全部あげるよ。
「そうか、それなら私がいただくとしよう」
「うん、」
2011/07/02.