時々、よりはもっと多いペースで。常に、よりはもっと少ないペースで。私は夜に、泣きたくなる。夜はネガティブになりがちだから、考え事をするのには向いていないって聞いたことがあるけれど。太陽が私を照らしている間、私は働かなければいけない。そして太陽が沈むのと同時に仕事を切り上げて、あの人がくれた広い部屋に帰る。広い、ただただ広い部屋に。そうして今日あったことを1つ1つ思い返しているうちに、なぜだろう。涙がぼたりぼたりと落ちてくる。それをどうすることもできないでいるうちに、また太陽が私を照らす。そんなことを、もう何度繰り返しただろうか。そして今日もまた、同じように太陽が昇る。また1日が始まる。さて、準備でもしようか。素足を冷たい床につけるのとほぼ同時に、重たいドアが乱暴な音をたてて開いた。
「気分はどうだ」
「のどが渇きました」
「答えになってねェ」
「お久しぶりです」
「ああ」
「お元気でしたか?」
「お前よりはな」
「私は元気ですよ」
「そうか」
「そうです」
サーが私のすぐ隣に座ってベッドがぐっと傾いて、私もサーのほうに傾いた。
「サー?」
舌打ちで返事をされてしまった。
「サー?」
「こういうのは慣れて無ェんだよ」
「サー、」
サーの見た目からは考えられないくらいに弱々しく、抱きしめられたと言うよりただ引き寄せられただけのような。サーはこんなに優しくものに触れられるのか、少し驚いた。
「サー」
「何だ」
「サー、」
サーの手が髪と髪の間に滑り込んで、ぞわっとした。
「お前は嘘をつくのが下手だ」
「サー」
そりゃあ、国1つを騙してしまうサーに比べたら、私の嘘なんか。ありんこみたいなもんですよ。
「サー」
「俺の部屋は分かるな」
「もちろん」
「太陽が沈んだら、3回ノックして入れ」
「サー?」
「こうしてやるくらいなら出来る」
「サー」
どうして、聞きたいことはたくさんあるけれど。今はこの人の精一杯の優しさを黙って「はい」と受け入れよう。
2011/06/25.