5回、たった数秒間のうちに5回。私の人生での最高記録。こんな記録が自慢になるわけはないけど。
「クロ、」
6回目だ。何がって…あんまりこういうのは、何て言うか…そう、簡単に言ってしまえば、キス、だ。ああ、言ってしまった。まあ、だから何だって話だけど。
「ねえ、ねえ!どうしたの?」
「何が」
「何か、いつもと違う」
「いつも?いつものおれってえのは何だ」
「それは…だって、その」
7回目だ。
「酔ってる?」
「おれが酒に飲まれると思うのか?」
「ううん、ないと思うけど」
8回目、9回目だ。
「じゃあ、何かあった?」
「そう思うか?」
「思う」
何か言おうとして開いたクロコダイルの唇はもうくっついてこなかった。ベッドにかかってた2人分の体重が1人分になって、そのうちクロコダイルの体重は少し離れたソファーに沈んだ。
「何かあったか、ねえ」
「私、何か怒らせることした?」
「いや、そうじゃねえ」
珍しく困りきった顔なんかするから、私まで少し、心配になる。
「名前、お前は…」
「うん」
「いや…」
「クロコダイル?」
「おれ以外の男からお前を隠したい」
「…え?」
とんでもなくストレートで、全然まわりくどくもないし、何て言うか、クロコダイルの口から出る言葉にしては、すっごく不似合い。
「やっぱり酔ってる?」
「ああ、そうかもな」
2011/08/14.