最初に言っとくけども、私はあいつがものすごく苦手。苦手?いや、受け付けない。気持ち悪いとかそういうんじゃないんだけど、受け付けない。アイサよりもずっとずっとあいつが苦手。どうしても好きになれない。だって怖いし、怖いし、怖いし。怖いんだよ!見た目から中身から全部が全部怖いんだよ!
ただでさえ男の人って苦手だし、あんまり話したことすらない私にとってあいつは…本当に怖い。
こんな私と違ってラキとかはすごいなあ、ほんと。女の私でもラキはすごくステキに見える。美人で気さくで強くて優しくて。くそ、私が男だったら絶対告白してた!
「おい」
「ラキみたくなりたいなあ」
「おい!」
「……え」
怖い声がすぐ後ろから聞こえて、腕をすっごい力でつかまれたこんなことをするの私の知り合いには1人しかいないどうしよう、私しんだかも。
「ごめんなさいころさないでくださいなんでもします」
「あ?」
「ほんっとごめんなさい!なんでもするから殴らないでください!ふおっ!?」
すごい力でつかまれてた腕がぱっていきなり放されたから力が抜けてそのまましりもちついたよもう。何なのこいつ。
「そんなに俺が…いや、何でもねえ」
「な、何?気になる」
「お前に言ったって、しょうがねえことだ」
「でも…気に、なるよ…いや、あの…どうしても嫌なら別にいい、けど…ごめんなさい」
「何ですぐ謝んだよ、お前は。別に悪いことしたわけでもねえのに」
だって、ワイパーが怖い、から。とりあえず謝っとこうかな、って。それだけ、それだけだよ。
「気に障ったなら、ごめんなさい」
「お前もう、やめろ、それ」
「え、ああ…うん」
「他のやつらと同じでいいだろ、別に」
ほんとは、ほんとは…ほんとはね、ワイパー。私、昔はワイパーのこと好きだったんだよ。だけどおっきくなるにつれて乱暴になるワイパーが何だか怖くて…。それでね、ワイパーのことを怖いって思う気持ちのほうが強くなってきて、好きって気持ちがどっか行っちゃったんだ。それでね、それで…。
「また、ワイパーの隣に居ても、いいの?」
「そうしろって言ってんだよ」
「…そか、へへ、何か恥ずかしいね」
「何照れてんだよお前」
「だだだだって、何か…ねえ?」
「変わんねえな、お前は」
(ごめんね、貴方は何一つ変わってなんかいなかったのに)
2011/05/07.