「ねえお頭、キスって何なんすかねー」
「何だお前、キスも知らねえのか?」
「なっ、し、失礼な!キスくらい知ってますよ!ただ、何でキスするのかなって、思って」
特に何かあったわけじゃないけど、何となく考え出したら気になって気になって。誰かに聞かずにはいられなかった。
「お前は何でだと思う」
「うーん…唾液の交換」
「もっと可愛いことを言えないのか、お前は」
「だってお頭、キスしたって手をつないだってハグしたっていつかはさよならするじゃないですか…そう考えると何か全部むなしいじゃないですか…意味ないっていうか」
「名前はまだ若いってことだ」
「は?」
お頭の笑顔はいつも優しい。大人の長い話は嫌いだけど、お頭のは何か違うから嫌いじゃない。
「うまい飯を食う為なら、ちょっとの苦労やしたごしらえは気にならないだろ?」
「まあ、そうですね」
「うまい酒を飲む為ならどんなことでも出来る」
「それはお頭ですね」
「まあとにかくだ」
お頭の小指がちょっと私の小指にあたった。
びくっと、思わず手を引っ込めた。びっくりした、お頭に触れた…触れられた?のは、初めてだったし。
「そういうことだ」
「ちょっと、わかんないんですけど…」
「キスやら何やらは、例え一瞬でもその2人にとって大きなものを作るしたごしらえや苦労みたいなもんなんだ」
「…やっぱ、わかんないですよ」
「やっぱ名前はガキだな」
「もうしばらくは、ガキのままでいいかもしれません」
「それはちょっと困るな」
「何でお頭が困るんですか?私別にびーびー泣きませんよ?」
「体だけは大人なのにな」
やっぱりわかんない。
(キスの意味が分かったらキスしてくれますか)
2011/05/07.