「ねえ、」
「あー?」
「ううん、やっぱ何でもない」
「そか」
またそうやって空ばかり見るんだね。私が隣に居るのに、空ばっかり見るんだね。小指と小指がこんなに近いのに、空ばかり見てるエースは何か遠いや。
「ねえ、」
「んー?」
「エース、いっつも何かに夢中だよね」
「そうか?」
「うん」
自分では気づいてなかったんだね。そんなに私の存在って小さいのかな?だとしたら、ちょっとだけ悲しいな。誰よりも1番、エースと居る時間が長いのは私だと思ってたんだけどなー。残念だなー。ちくしょーう。
「名前、何か怒ってるか?」
「ううん、別にー」
「ならいいけどよ!」
またエースは空ばっかりに戻る。あーあ、こりゃ恋でもしてんのかなこいつ。
頭の中ではその子と手をつないだりキスしたりあんなこととかしてんのかな。うわ、汚らわしい。
「妄想彼女とよろしくやってんじゃねーよ馬鹿」
「は?何がどうしたんだよ?」
驚いたような声だけど口元にやにやしてんだよ馬鹿。お前の能内は私につつぬけなんだからな馬鹿。
「あれだろ、エースはどこかの街に可愛らしい女の子を1人残してきちゃったんだろ、いつもその子を思ってるから私と居る時いつも上の空なんだろ、知ってるんだからな馬鹿エースばーかばーか」
「落ち着けって、な?」
「私と居る時は私のことだけ考えとけよ馬鹿」
何で手なんか握るんだよ、馬鹿。
(貴方を夢中にしてる誰かが、空だったらいいのになあ)
2011/04/30.