雨とか海が色んなものをさらっていった後の街を1人でゆっくり歩いてみた。
泥とか瓦礫とかがいっぱいで、どこが道だったのか、どこが何の建物だったのか。気をつけて歩かないと、目的の道からそれてしまうばかりだ。
ばしゃり、水溜まりに片足を突っ込んでしまった。ちょっと落ち込む。冷たい。
そういえば前にも、まだ街がこんなになる前。2人で何度かこの道を歩いたことがあったね。
あなたの話はすごくおもしろくて、私はろくに前も見ずに笑ってばかりで。
だけどあなたはいつも、そんな私の手を引いて歩いてくれてたね。
あなたが手を引いてくれていたから、私は1度も転ばなかったんだね。今更だけれどありがとう。
「もうすぐじゃ」
あなたはこの曲がりかどでいつも、そう言ってたね。最初のうちは名前と居れる時間が短くて寂しいのう、とか言って、その頃の「もうすぐじゃ」はあまり元気がなかったけれど。いつしか一緒に住むようになって、家に帰ってからも一緒に居られるようになった頃からあなたの「もうすぐじゃ」はとても明るい声になった。
さて、私とあなたの家だった場所に1人で来てはみたのだけれど。跡形もないとか、瓦礫の山だとか。そんなこと以前に、1人だからなのか。どうもここが私とあなたの家なのか、私には分からないのです。
(1人で歩くのはあまりにも退屈ですよ)
2011/06/09.